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本来描くハズだった『虚無』のカイジパターン。

地味に薬物系になりかけちゃったので注意です。
今回はエロ無いですけど、一応話しが話なのでR指定とさせて頂きます。






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虚無だとは思いたくない






「カイジ!」
部屋のドアを開けると、一条が嬉しそうな顔で駆け寄って来る。
その体を受け止め、ベッドの方を見ると、和也が不機嫌そうに横を向いた。
何となくだが、目元が赤くなっているようにも思える。

「一緒に居てよ。カイジ。おれ、いつも一人でさびしいんだ」
一条はそう言って、俺の服を握った。
「あぁ。一緒に居てやるよ」
無責任かもしれないとは、思っている。
それでも、この一条をそのままには出来なくて。
本来の一条ならば、絶対に俺なんかに助けは求めない。
自力で這い上がって、俺に報復する。
そんな奴が今、俺に助けを求めているのだ。
精神がおかしくなった状態で。
この、狂った場所から。

「カイジ。よかった」
一条は俺の体を抱き締め、笑った。
見た事の無い、無邪気な笑顔で。

「本当に金出す前に、数日一緒に過ごしてみれば?高い金出して引き取ってから後悔してもアレだろ?」
和也がベッドから立ち上がり、そう言った。
それを聞くと、一条は俺に抱き付いたまま、顔を和也の方に向ける。
「話は俺が通してやるからさ」
俺と一条に近付き、和也は優しく一条の髪を撫でた。

「もっと」
甘えた声を出す一条に、和也は渇いた笑いを浮かべて手を離す。
「後はカイジにやってもらいな」
それだけ言うと、和也は部屋を出ていった。
結局、あいつは何がしたいのかよく分からない。

「カイジ、撫でてっ」
言われるままに髪を撫でる。
そこから、一条との生活が始まった。







暫く一条の相手をしていると、黒服が部屋に入ってきた。
ソイツの説明によると、取り敢えず一ヶ月までは一条の仕事を止め、俺と過ごして良いとの事だった。

食事は決められた時間に一日三回。
九時に一条を風呂に連れて行くが、俺は自由にして良い。
それ以外は基本自由だが、俺が出入りする際はボディチェックと荷物のチェックはする。
俺の出入りも自由だが、一条を連れ出すのは禁止。
などの事を説明し、黒服は出ていった。

「ねぇねぇカイジ。ちゅ〜しようよ」
一条が俺の首に腕を回し、顔を寄せる。
その唇に指を添え、首を振った。
「いいんだ一条。俺は客じゃないから、そういう事はしなくていいんだ」
出来るだけ優しく言うが、一条は不思議そうに首を傾げる。
「ちゅ〜しようよ…」
あんまり悲しげに一条が言うから、俺も分からなくなる。

「お前、本当にキスしたいのか?仕事としてじゃなく?」
俺が聞くと、一条は頷いた。
「うん。だって、ちゅ〜するときもちいでしょ?」
ニコニコと笑って言う一条は、嘘を吐いているようには見えない。
多分、本当にしたいんだ。
確か和也といた時も、普通に気持ち良さそうにしていた。

もしかして一条は、セックスに依存でもしてるのか?
しかも、頭が幼退化しているから、隠しもせずに誘ってくる。
本当は嫌なハズの行為から、何重にもして守っているのか。
泣きそうになるのを堪えて、一条の身体を抱き締めた。

「カイジ?どうしたの?」
この一条の姿も、俺の罪なんだろうか?
俺は鉄骨渡りの時、押さないと決めた。
押したとしても、謝らないと、許されようとはしないと決めた。
だけどあの時、沼の勝負の時。
分かっていた。
利根川に対する処置を見ていた俺には。
俺が勝って上に上がった分以上に、相手が下に落とされる事を。

鉄骨渡りの時と何ら変わり無い。
落ちれば軽症では済まないと分かって落とした。
俺が落ちるか、一条が落ちるかしなければ終わらない勝負だったとは言え、俺が落とした事実は変わらない。
その上、きっと俺はあの時、許されようとした。
一条を焚き付ける事で、俺は許されようとしたんだ。

「何で俺なんかに、助けを求めるんだよ」
罵倒されたなら、せめて怯えてでも貰えたら、きっともっと楽だったろうに。
これも一条の嫌がらせだってんなら、容赦ないよな。

「カイジ」
一条は勘違いしているようで、甘えた声で俺の名前を呼ぶと、胸に擦り寄ってくる。
「もっときもちい事しようよ」
ふやけた笑顔で一条は言うと、俺の唇に自分の唇を重ねた。
「ん…」
舌で唇を割り、俺の舌に吸い付く。
口内をまさぐる感覚に、目の前の一条とその幼さとのギャップで、頭が混乱する。
此方から絡めてやれば、一条の腰が嬉しそうに跳ねた。

唾液を飲ませて口を離せば、一条は蕩けた顔で俺を見る。
「カイジくん。もっと」
昔は絶対に言わなかった言葉を、今は簡単に言ってしまうんだ。

「一条。戻ってこいよ…」
頬を撫でても、俺の目から零れる涙で意味が無い。
ホント、泣いてどうすんだか。






「君を連れて来るとは、和也様も何を考えておられるのか…」
白衣を着た男と共に、黒崎が部屋に来てそう言った。
黒崎の姿を見ると、一条は嬉しそうに駆け寄って行く。
「黒崎さまっ!おくすりくれるの?」
自ら袖を捲って見せた腕には、幾つかの注射の痕が残っている。
そういえば、和也も薬がどうたら言っていた。

「私は君にあげたいのだがね、カイジくんが嫌がるかもしれんね」
優しく一条に言いながら、黒崎が俺を見る。
どんなに一条が欲しがったって、そんなの打ってたらおかしくなる。
「駄目だ。一条。その薬は駄目」
後ろから一条を抱き寄せ、注射の痕を撫でる。
「なんで?あのおくすりやるとね、きもちいのがもっときもちくなるんだよ?」
それが駄目なんだよ。
「あれはな、本当は身体に良くないんだ。一条の身体が、ボロボロになっちゃうんだよ」
例えそれが心の支えでも、手を切らなきゃいけないんだ。

「うそだぁ。あんなにイイのに。悲しくなってもね、明るくなれるんだよ。そうだ!カイジくんもやればわかるよ」
ニコニコしながら言うもんだから、どう言ったら良いのか分からなくなる。
「嘘じゃない。もうあの薬は打っちゃ駄目なんだよ」
首を横に振ると、一条は悲しそうに俺を見る。

「ならば、私達は帰らせて頂こうか」
黒崎が薄い笑みを浮かべて言うと、白衣を着た男は薬に使う道具をカバンに片し始めた。
それを見た一条は、藻掻くように暴れ始める。
「やだっ!カイジくん!折角黒崎さまがおくすり持ってきてくれたのに!打ちたい!黒崎さま!」
腕を伸ばし、黒崎の袖を掴む。
「止めろ一条!駄目なんだ!」
引き離すように抱き締め、必死に押さえ込む。
その間に、無言で二人は背を向け、ドアへ向かう。

「いや!待って!離してカイジくん!離してよ!」
一条の目から、ボロボロと涙が零れた。
ドアの閉まる音がして、やっと手を離す。
「カイジくんのばか…もうきらい…!」
子供の喧嘩みたいな口調で叫ぶと、一条はベッドに走って飛び乗る。
そっぽを向いて枕に顔を埋め、しゃっくりを上げるその様は、まるで親に怒られた子供同然だった。

「一条。アレ、いけないモンなんだよ」
ベッドに近付いて言えば、一条は目だけ此方に向ける。
「アレしないと、こわいゆめみるんだ」
ギュッと布団を握りしめて、一条が言う。
「うん。なら、俺が側で寝てやるから、こわい夢みたら起こしてやる。それでいいだろ?」
一条の髪を撫でながら言えば、一条は眉を下げたまま俺を見る。

「ずっといっしょにいてくれるの?」
「あぁ。約束したろ?」
俺が答えれば、一条は赤くなった目を細めて笑った。
きっと俺達の本当の戦いはこれからだから、一緒に寝てやるだけで喜ぶなら、それでいい。








「助けて…カイジ!助けてよ!」
ある夜、そんな一条の声に起こされて目を開けると、布団の中で丸まった一条が見えた。
「一条?」
「カイジ!助けてカイジ!カイジぃ!」
声を掛けても、一条は喚くようにして気付かない。
「俺はここにいるぞ!一条!」
急いで手短な電気のスイッチを押す。
明るくなって見えた一条は、蹲ったまま耳を手で覆っていた。

「一条!ほら、俺を見ろ!」
前から手を伸ばすと、一条は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を此方に向けた。
「カイジ!みんながおれのこと悪く言うんだ…!おれ、何も悪いことしてないのに!」
耳を塞いで喚く一条は、まるで今まさに何か言われているようで。
「おれは悪くない!ちがう!いやぁあああ!」
「大丈夫だ!お前は何も悪くない!落ち着け」
包むように抱き締めれば、一条は目を見開いた。

「やだぁ!離して!痛いのは嫌なの!苦しいのは嫌なの!」
俺の腕から逃れようと、一条が暴れる。
今、一条には何が見えているんだ…?
「こわいよ…!なんでみんなおれの事いじめるの?なんでみんな、おれの事道具みたいにつかうの?嫌だよぉ!」
服が涙で濡れて、肩が冷たくなる。
一条は、あんなにセックスが好きみたいにしてたけど、やっぱり怖かったんだな。嫌だったんだな。

「大丈夫だよ。もうやらなくて良いんだ。もう嫌な事はしなくていいんだ」
落ち着かせようと頭を撫でても、一条は悲鳴を上げてその手を払った。
「もういやぁ!出して!助けてカイジ!」
「俺はちゃんとここにいるから」
手を離したら何をするか分からなくて、俺は抱き締めたまま一条の背中を擦る。

「なんで…ぼくいいこにしてたのに!お留守番だってちゃんとしてたのに!」
何の話だろうか。
もしかして、一条の子供の頃の事か?
「こんな顔に、望んで生まれた訳じゃないのに!ふざけんなよ…!」
口調が変わる。
「一条?」
顔を合わせても、一条の目は俺を見ていない。
ただ、その瞳からは絶えず涙が溢れている。

「どうして俺ばっかり、こんな目に合わなきゃいけない…!嫌いなんだ!こんな顔も、それに群がるクズ共も…!」
一条が俺の服を握りしめ、胸に顔を埋めた。
戻って来てるのか?一条が。
「それでも…捧げたのに…。貴方の為なら、惜しくはなかったのに…それでも俺が悪いのか…?俺はただ…」
ガタガタと一条の身体が震え、手に力がこもる。

「いやだ…ちがう…俺はただ、認めて欲しかっただけなのに…!」
不意に一条の手が強く握られる。
それだけで分かった。
「止めろ一条!」
無理やり顔を此方に向かせ、口に指をねじ込む。
思った通り歯が立てられて、俺の指に食い込んだ。
こいつ、舌を噛もうとしやがった。

「はらひて…!」
指が差し込まれたまま一条が叫ぶ。
「もう舌噛まないって約束するならな」
俺の指を伝って、唾液が滴り落ちる。
一条は顔を歪めて、顔を縦に振った。
それを確認して指を抜けば、一条は俺を思い切り突飛ばした。
その勢いで、俺は壁に打ち付けられる。

「お前の…お前のせいだ…!お前がなまじ希望なんか残したから…!ざけんな!誰がてめぇに助けなんか求めるか…!」
一条は椅子を掴んで、俺の方に投げ付ける。
その時の表情は、俺の見慣れていた彼奴の顔で。
「一条…!」
思わず抱き付こうとするが、一条が俺の腹を蹴りあげた。
「近寄んじゃねぇ!クズ!ゴミ!カス!死ね!」
この罵倒も、腹の痛みも嬉しくて。
寧ろ、俺はこれを待っていたんだ。
壊れた一条を見た時から。

「俺はお前なんか…っ!」
そう言った瞬間、一条の身体からガクリと力が抜けた。
「だ…大丈夫か?」
急いで駆け寄れば、ベッドに倒れ込んだ一条は、どうやら気を失っているようだった。

優しく位置を直し、布団を掛ける。
あんだけ暴れれば、かなりの労力使っただろうな。
それでも、帰ってきてくれただけで、こんなに嬉しいなんて。

額に唇を落とせば、一条が少し笑った。








「カイジくん。きもちい事しようよ」
目を覚ませば、一条は壊れた状態に戻っていた。
多分、昨日の方が稀だったんだろうな。
脱ぎ出した服を着せ直し、一条の頭を撫でる。
「いいの。そういう事はしなくて」
言い聞かせるように俺が言えば、一条は首を傾げた。
分からなくてもいいさ。今のお前には。

そうしていると、不意にドアの開く音がした。
「やぁカイジさん。昨日は大変だったみたいだね」
にやけた顔で入って来たのは、和也だった。
そうか。黒服がちゃんと監視してて、報告したのか。
個室で二人だから、つい忘れていた。

「一条さんはやっぱり、カイジさんの方が良いんだな」
前回とは違い、和也に駆け寄って行かない一条は、俺の服を握ったままポケッとしている。
その一条を眺める和也の目は、何かいつもと違う気がした。
「……カイジさん。ちょっと席外してくんない?」
それを言われて、最初に浮かんだのは、最初に見せられたあの光景。
まだ今の入院服みたいな服なら良い。
あの時はスーツまで着せられていて、俺はあの一条が無理やりさせられてるんじゃないかって、頭が真っ白になった。

「何をする気だ…」
俺が言えば、和也はため息を吐いた。
「ちょっと話すだけだよ。元々、一条さんはこっちのモンだしね。借金が無くなるまでは」
そう言って和也がニヤリと笑うモンだから、カッと顔が熱くなる。
「一条はモノじゃ…」
「カイジくん」
俺の言葉を遮り、一条が言った。

「おれ、和也様とお話ししたい」
ニコリと笑うと、一条は和也を見る。
「…なら、もしも変な事されたら、大声出すんだぞ?いいな?」
肩を掴んで言い聞かせるように言えば、一条はムッと頬を膨らませる。
「大丈夫だよ。和也様、すごく優しいもん。いつもお菓子くれるし、痛いことしないもん」
和也がそんな事を?
俺が振り返れば、和也は頭を掻いていた。

「ま、そういう事だからさ。出てってよ」
和也に言われ、一条から離れる。
何をするか分からないが、一条が話したいと言っているのを無下にも出来ない。
部屋を出る前にもう一度振り向けば、一条がニコリと笑った。







カイジさんが部屋を出て、一条さんと二人になった。
昨日の騒ぎの映像を見て初めに思ったのは、例え一瞬でも一条さんを呼び戻したカイジさんへの嫉妬だった。
なんで、カイジさんなのか。
分かっていても、思わずにはいられなくて。
「一条さん」
名前を呼べば、一条さんは俺を見る。
「カイジさんの事、好き?」
一条さんは一瞬驚いた顔をして、次にはいつものふやけた笑顔になった。

「おれ、カイジくんも和也様もだいすきだよ」
気を使ってるつもりか、質問の意図を理解してないのか。
どちらにしろ、俺にはその姿しか見せてくれないんだな。
「一条さん。好きなんだったらさ、俺のトコロにも戻ってきてよ」
近付いて髪を撫でると、一条さんは不思議そうな顔をする。
「なんの話?おれわかんないよ」
記憶が無いのか。昨日の事は。
まぁそうか。あるなら、もう戻っているハズだ。

「ねぇ一条さん。俺の事、どう思う?」
虚しいな。無い物ねだりは。
それでも、俺に素面であんな事を言ってくれたのは、アンタだけだから。
あぁそうだ。好きだったんだ。欲しかったんだ。アンタが。
だからこそ、アンタがこのままならいっそのこと……

「和也様は、とっても優しくて、だいすき!」
「そっか」
髪を撫でていた手を、首に滑らせる。
そのままゆっくり力を込めていけば、一条さんは大きい瞳を瞬かせた。
「んっ…はっ…かずや…さまっ…!」
苦しげに掠れた声で、俺の名前を呼ぶ。
その瞳からは、綺麗な真珠みたいな涙がポロポロと零れた。

俺は優しくなんかない。
こうして、人の苦しむ様が好きで、もう何人も人の死ぬ様を見ている。
今さら躊躇いなんて無い。
そうだよ。こんなに綺麗な顔で死んでくれるなら、もっと早くこうすれば良かったんだ。

「やっ…くるし………!」
俺の腕に爪を立て、高い声で喘ぐ。
それはまるで情事の時の声の様で。
このまま捻り潰せば死ぬんだろうか。
一条さんが戻って来る事なく、死ぬんだろうか。

「ハッ…あぁっ……ゲホッ…」
無意識に首から手を離せば、一条さんは身体を折ってえずく様に息をする。
何故、離したんだろう。
最早、今まで通りに一条さんを懐かせる事すら出来ないのに。
「ほら、大声出しなよ。変な事されたら大声出す約束でしょ?」
俺が言えば、一条さんは息の荒いまま此方を見た。

「やはり、お優しいんですね。和也坊っちゃん」
口角を吊り上げ笑う一条さんは、壊れた時の顔じゃない。
「殺してしまいたい程、私を憎んだのでしょう?貴方の思い通りにならない私を」
徐々に、一条さんの息が整っていく。
「それでも、私を殺せないのは、まだまだ甘ちゃんだからですよ。和也坊っちゃん」
堂々と俺を見る一条さんが恐ろしくて、つい後ろに下がる。
それを見た一条さんは、柔らかく笑顔を作った。

「ですが、それで良いのですよ。まだ和也坊っちゃんはお若いのですから、いくらでも変わる事が出来るのです。そして、それが許される」
ゆっくりと一条さんが俺に歩み寄る。
そして、頬を優しく撫でた。
「親の真似ばかりしていては、いつまでも今のままですよ。いずれ、変わる事が許されない日が来る事を、忘れてはいけません。もしくは、組織が貴方に変わる事を強要してくる場合もあるかもしれません」
俺より背の高い一条さんが、微笑みながら俺に言う。

「這いつくばってでも、自分で切り開く勇気がなければ、いつまでもクソガキのままですがね」
両手で頬を撫で、その手が首へ滑る。
人の指とは思えぬほど冷たいソレは、首筋を撫でて滑り落ちた。

「私は貴方が、嫌いです」
そう言って微笑んだ一条さんは、怖いほど綺麗な笑顔を浮かべていた。
何も言えずに見詰めていると、一条さんはゆっくりと唇を重ねてくる。
壊れてから何度も重ねたハズの唇なのに、初めてのような感触に感じた。

再び一条さんが顔を上げれば、ふやけた顔に戻っていて。
「一条さん」
抱き締めれば、腕を背中に回してくる。
「なぁに?和也様。どうしたの?」
嬉しそうに頬を擦り寄せてくる彼に、一条さんが居なくなった事を知る。

あぁ、アンタは一体どうしたら、俺のモノになってくれるんだ…!
俺が欲しいモノはきっと、アンタが知っているハズなのに…









呼ばれて部屋に戻れば、一条が和也の膝に頭を乗せて甘えていた。
「一条」
俺が名前を呼べば、一条は犬みたいに駆け寄って来る。
「大丈夫だったか?」
頭を撫でながら聞くと、一条は笑った。
大丈夫って意味なんだろう。

「じゃあ俺は帰ろうかな…」
和也はそう言って立ち上がり、ドアの方へ向かう。
「和也様!また来てね!」
ニコニコしながら一条が手を振ると、和也が振り返って俺を見る。
「カイジさん。アンタは虚しくないのかい?こんな一条さんを相手にしてて」
その言葉に、ビクリと心臓が震える。

虚しいって思いは、きっといつもあって。
一条が元に戻る保証なんて、何も無いから。
それでも俺は……

「それでも俺は、一条が好きだから」
俺が言えば、一条が「おれもすきー!」なんて言いながら抱き付いて来る。
和也は小さくため息を吐いて、ドアノブに手を掛けた。
「変わってるよ。アンタ」
そう言う和也の顔には、いつものにやけた笑みは無かった。

出て行く和也を見送り、傍らの一条を見る。
不思議そうに見てくる一条は、やっぱり俺の好きな一条とは違う。
だからって、目を背ける事は出来ない。
これは俺の罰だ。もう、許されようとは思わない。
でも、そんな事は建前で。

きっと俺は、ただ一条と一緒に居たいだけなんだ。

再び、一条が俺の胸に顔を埋める。
髪を撫でてやれば、幸せそうに一条が笑った。









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