管理人の腐った頭にご注意下さい。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 本来描くハズだった『虚無』のカイジパターン。 地味に薬物系になりかけちゃったので注意です。 今回はエロ無いですけど、一応話しが話なのでR指定とさせて頂きます。 虚無だとは思いたくない 一 「カイジ!」 部屋のドアを開けると、一条が嬉しそうな顔で駆け寄って来る。 その体を受け止め、ベッドの方を見ると、和也が不機嫌そうに横を向いた。 何となくだが、目元が赤くなっているようにも思える。 「一緒に居てよ。カイジ。おれ、いつも一人でさびしいんだ」 一条はそう言って、俺の服を握った。 「あぁ。一緒に居てやるよ」 無責任かもしれないとは、思っている。 それでも、この一条をそのままには出来なくて。 本来の一条ならば、絶対に俺なんかに助けは求めない。 自力で這い上がって、俺に報復する。 そんな奴が今、俺に助けを求めているのだ。 精神がおかしくなった状態で。 この、狂った場所から。 「カイジ。よかった」 一条は俺の体を抱き締め、笑った。 見た事の無い、無邪気な笑顔で。 「本当に金出す前に、数日一緒に過ごしてみれば?高い金出して引き取ってから後悔してもアレだろ?」 和也がベッドから立ち上がり、そう言った。 それを聞くと、一条は俺に抱き付いたまま、顔を和也の方に向ける。 「話は俺が通してやるからさ」 俺と一条に近付き、和也は優しく一条の髪を撫でた。 「もっと」 甘えた声を出す一条に、和也は渇いた笑いを浮かべて手を離す。 「後はカイジにやってもらいな」 それだけ言うと、和也は部屋を出ていった。 結局、あいつは何がしたいのかよく分からない。 「カイジ、撫でてっ」 言われるままに髪を撫でる。 そこから、一条との生活が始まった。 二 暫く一条の相手をしていると、黒服が部屋に入ってきた。 ソイツの説明によると、取り敢えず一ヶ月までは一条の仕事を止め、俺と過ごして良いとの事だった。 食事は決められた時間に一日三回。 九時に一条を風呂に連れて行くが、俺は自由にして良い。 それ以外は基本自由だが、俺が出入りする際はボディチェックと荷物のチェックはする。 俺の出入りも自由だが、一条を連れ出すのは禁止。 などの事を説明し、黒服は出ていった。 「ねぇねぇカイジ。ちゅ〜しようよ」 一条が俺の首に腕を回し、顔を寄せる。 その唇に指を添え、首を振った。 「いいんだ一条。俺は客じゃないから、そういう事はしなくていいんだ」 出来るだけ優しく言うが、一条は不思議そうに首を傾げる。 「ちゅ〜しようよ…」 あんまり悲しげに一条が言うから、俺も分からなくなる。 「お前、本当にキスしたいのか?仕事としてじゃなく?」 俺が聞くと、一条は頷いた。 「うん。だって、ちゅ〜するときもちいでしょ?」 ニコニコと笑って言う一条は、嘘を吐いているようには見えない。 多分、本当にしたいんだ。 確か和也といた時も、普通に気持ち良さそうにしていた。 もしかして一条は、セックスに依存でもしてるのか? しかも、頭が幼退化しているから、隠しもせずに誘ってくる。 本当は嫌なハズの行為から、何重にもして守っているのか。 泣きそうになるのを堪えて、一条の身体を抱き締めた。 「カイジ?どうしたの?」 この一条の姿も、俺の罪なんだろうか? 俺は鉄骨渡りの時、押さないと決めた。 押したとしても、謝らないと、許されようとはしないと決めた。 だけどあの時、沼の勝負の時。 分かっていた。 利根川に対する処置を見ていた俺には。 俺が勝って上に上がった分以上に、相手が下に落とされる事を。 鉄骨渡りの時と何ら変わり無い。 落ちれば軽症では済まないと分かって落とした。 俺が落ちるか、一条が落ちるかしなければ終わらない勝負だったとは言え、俺が落とした事実は変わらない。 その上、きっと俺はあの時、許されようとした。 一条を焚き付ける事で、俺は許されようとしたんだ。 「何で俺なんかに、助けを求めるんだよ」 罵倒されたなら、せめて怯えてでも貰えたら、きっともっと楽だったろうに。 これも一条の嫌がらせだってんなら、容赦ないよな。 「カイジ」 一条は勘違いしているようで、甘えた声で俺の名前を呼ぶと、胸に擦り寄ってくる。 「もっときもちい事しようよ」 ふやけた笑顔で一条は言うと、俺の唇に自分の唇を重ねた。 「ん…」 舌で唇を割り、俺の舌に吸い付く。 口内をまさぐる感覚に、目の前の一条とその幼さとのギャップで、頭が混乱する。 此方から絡めてやれば、一条の腰が嬉しそうに跳ねた。 唾液を飲ませて口を離せば、一条は蕩けた顔で俺を見る。 「カイジくん。もっと」 昔は絶対に言わなかった言葉を、今は簡単に言ってしまうんだ。 「一条。戻ってこいよ…」 頬を撫でても、俺の目から零れる涙で意味が無い。 ホント、泣いてどうすんだか。 三 「君を連れて来るとは、和也様も何を考えておられるのか…」 白衣を着た男と共に、黒崎が部屋に来てそう言った。 黒崎の姿を見ると、一条は嬉しそうに駆け寄って行く。 「黒崎さまっ!おくすりくれるの?」 自ら袖を捲って見せた腕には、幾つかの注射の痕が残っている。 そういえば、和也も薬がどうたら言っていた。 「私は君にあげたいのだがね、カイジくんが嫌がるかもしれんね」 優しく一条に言いながら、黒崎が俺を見る。 どんなに一条が欲しがったって、そんなの打ってたらおかしくなる。 「駄目だ。一条。その薬は駄目」 後ろから一条を抱き寄せ、注射の痕を撫でる。 「なんで?あのおくすりやるとね、きもちいのがもっときもちくなるんだよ?」 それが駄目なんだよ。 「あれはな、本当は身体に良くないんだ。一条の身体が、ボロボロになっちゃうんだよ」 例えそれが心の支えでも、手を切らなきゃいけないんだ。 「うそだぁ。あんなにイイのに。悲しくなってもね、明るくなれるんだよ。そうだ!カイジくんもやればわかるよ」 ニコニコしながら言うもんだから、どう言ったら良いのか分からなくなる。 「嘘じゃない。もうあの薬は打っちゃ駄目なんだよ」 首を横に振ると、一条は悲しそうに俺を見る。 「ならば、私達は帰らせて頂こうか」 黒崎が薄い笑みを浮かべて言うと、白衣を着た男は薬に使う道具をカバンに片し始めた。 それを見た一条は、藻掻くように暴れ始める。 「やだっ!カイジくん!折角黒崎さまがおくすり持ってきてくれたのに!打ちたい!黒崎さま!」 腕を伸ばし、黒崎の袖を掴む。 「止めろ一条!駄目なんだ!」 引き離すように抱き締め、必死に押さえ込む。 その間に、無言で二人は背を向け、ドアへ向かう。 「いや!待って!離してカイジくん!離してよ!」 一条の目から、ボロボロと涙が零れた。 ドアの閉まる音がして、やっと手を離す。 「カイジくんのばか…もうきらい…!」 子供の喧嘩みたいな口調で叫ぶと、一条はベッドに走って飛び乗る。 そっぽを向いて枕に顔を埋め、しゃっくりを上げるその様は、まるで親に怒られた子供同然だった。 「一条。アレ、いけないモンなんだよ」 ベッドに近付いて言えば、一条は目だけ此方に向ける。 「アレしないと、こわいゆめみるんだ」 ギュッと布団を握りしめて、一条が言う。 「うん。なら、俺が側で寝てやるから、こわい夢みたら起こしてやる。それでいいだろ?」 一条の髪を撫でながら言えば、一条は眉を下げたまま俺を見る。 「ずっといっしょにいてくれるの?」 「あぁ。約束したろ?」 俺が答えれば、一条は赤くなった目を細めて笑った。 きっと俺達の本当の戦いはこれからだから、一緒に寝てやるだけで喜ぶなら、それでいい。 四 「助けて…カイジ!助けてよ!」 ある夜、そんな一条の声に起こされて目を開けると、布団の中で丸まった一条が見えた。 「一条?」 「カイジ!助けてカイジ!カイジぃ!」 声を掛けても、一条は喚くようにして気付かない。 「俺はここにいるぞ!一条!」 急いで手短な電気のスイッチを押す。 明るくなって見えた一条は、蹲ったまま耳を手で覆っていた。 「一条!ほら、俺を見ろ!」 前から手を伸ばすと、一条は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を此方に向けた。 「カイジ!みんながおれのこと悪く言うんだ…!おれ、何も悪いことしてないのに!」 耳を塞いで喚く一条は、まるで今まさに何か言われているようで。 「おれは悪くない!ちがう!いやぁあああ!」 「大丈夫だ!お前は何も悪くない!落ち着け」 包むように抱き締めれば、一条は目を見開いた。 「やだぁ!離して!痛いのは嫌なの!苦しいのは嫌なの!」 俺の腕から逃れようと、一条が暴れる。 今、一条には何が見えているんだ…? 「こわいよ…!なんでみんなおれの事いじめるの?なんでみんな、おれの事道具みたいにつかうの?嫌だよぉ!」 服が涙で濡れて、肩が冷たくなる。 一条は、あんなにセックスが好きみたいにしてたけど、やっぱり怖かったんだな。嫌だったんだな。 「大丈夫だよ。もうやらなくて良いんだ。もう嫌な事はしなくていいんだ」 落ち着かせようと頭を撫でても、一条は悲鳴を上げてその手を払った。 「もういやぁ!出して!助けてカイジ!」 「俺はちゃんとここにいるから」 手を離したら何をするか分からなくて、俺は抱き締めたまま一条の背中を擦る。 「なんで…ぼくいいこにしてたのに!お留守番だってちゃんとしてたのに!」 何の話だろうか。 もしかして、一条の子供の頃の事か? 「こんな顔に、望んで生まれた訳じゃないのに!ふざけんなよ…!」 口調が変わる。 「一条?」 顔を合わせても、一条の目は俺を見ていない。 ただ、その瞳からは絶えず涙が溢れている。 「どうして俺ばっかり、こんな目に合わなきゃいけない…!嫌いなんだ!こんな顔も、それに群がるクズ共も…!」 一条が俺の服を握りしめ、胸に顔を埋めた。 戻って来てるのか?一条が。 「それでも…捧げたのに…。貴方の為なら、惜しくはなかったのに…それでも俺が悪いのか…?俺はただ…」 ガタガタと一条の身体が震え、手に力がこもる。 「いやだ…ちがう…俺はただ、認めて欲しかっただけなのに…!」 不意に一条の手が強く握られる。 それだけで分かった。 「止めろ一条!」 無理やり顔を此方に向かせ、口に指をねじ込む。 思った通り歯が立てられて、俺の指に食い込んだ。 こいつ、舌を噛もうとしやがった。 「はらひて…!」 指が差し込まれたまま一条が叫ぶ。 「もう舌噛まないって約束するならな」 俺の指を伝って、唾液が滴り落ちる。 一条は顔を歪めて、顔を縦に振った。 それを確認して指を抜けば、一条は俺を思い切り突飛ばした。 その勢いで、俺は壁に打ち付けられる。 「お前の…お前のせいだ…!お前がなまじ希望なんか残したから…!ざけんな!誰がてめぇに助けなんか求めるか…!」 一条は椅子を掴んで、俺の方に投げ付ける。 その時の表情は、俺の見慣れていた彼奴の顔で。 「一条…!」 思わず抱き付こうとするが、一条が俺の腹を蹴りあげた。 「近寄んじゃねぇ!クズ!ゴミ!カス!死ね!」 この罵倒も、腹の痛みも嬉しくて。 寧ろ、俺はこれを待っていたんだ。 壊れた一条を見た時から。 「俺はお前なんか…っ!」 そう言った瞬間、一条の身体からガクリと力が抜けた。 「だ…大丈夫か?」 急いで駆け寄れば、ベッドに倒れ込んだ一条は、どうやら気を失っているようだった。 優しく位置を直し、布団を掛ける。 あんだけ暴れれば、かなりの労力使っただろうな。 それでも、帰ってきてくれただけで、こんなに嬉しいなんて。 額に唇を落とせば、一条が少し笑った。 五 「カイジくん。きもちい事しようよ」 目を覚ませば、一条は壊れた状態に戻っていた。 多分、昨日の方が稀だったんだろうな。 脱ぎ出した服を着せ直し、一条の頭を撫でる。 「いいの。そういう事はしなくて」 言い聞かせるように俺が言えば、一条は首を傾げた。 分からなくてもいいさ。今のお前には。 そうしていると、不意にドアの開く音がした。 「やぁカイジさん。昨日は大変だったみたいだね」 にやけた顔で入って来たのは、和也だった。 そうか。黒服がちゃんと監視してて、報告したのか。 個室で二人だから、つい忘れていた。 「一条さんはやっぱり、カイジさんの方が良いんだな」 前回とは違い、和也に駆け寄って行かない一条は、俺の服を握ったままポケッとしている。 その一条を眺める和也の目は、何かいつもと違う気がした。 「……カイジさん。ちょっと席外してくんない?」 それを言われて、最初に浮かんだのは、最初に見せられたあの光景。 まだ今の入院服みたいな服なら良い。 あの時はスーツまで着せられていて、俺はあの一条が無理やりさせられてるんじゃないかって、頭が真っ白になった。 「何をする気だ…」 俺が言えば、和也はため息を吐いた。 「ちょっと話すだけだよ。元々、一条さんはこっちのモンだしね。借金が無くなるまでは」 そう言って和也がニヤリと笑うモンだから、カッと顔が熱くなる。 「一条はモノじゃ…」 「カイジくん」 俺の言葉を遮り、一条が言った。 「おれ、和也様とお話ししたい」 ニコリと笑うと、一条は和也を見る。 「…なら、もしも変な事されたら、大声出すんだぞ?いいな?」 肩を掴んで言い聞かせるように言えば、一条はムッと頬を膨らませる。 「大丈夫だよ。和也様、すごく優しいもん。いつもお菓子くれるし、痛いことしないもん」 和也がそんな事を? 俺が振り返れば、和也は頭を掻いていた。 「ま、そういう事だからさ。出てってよ」 和也に言われ、一条から離れる。 何をするか分からないが、一条が話したいと言っているのを無下にも出来ない。 部屋を出る前にもう一度振り向けば、一条がニコリと笑った。 六 カイジさんが部屋を出て、一条さんと二人になった。 昨日の騒ぎの映像を見て初めに思ったのは、例え一瞬でも一条さんを呼び戻したカイジさんへの嫉妬だった。 なんで、カイジさんなのか。 分かっていても、思わずにはいられなくて。 「一条さん」 名前を呼べば、一条さんは俺を見る。 「カイジさんの事、好き?」 一条さんは一瞬驚いた顔をして、次にはいつものふやけた笑顔になった。 「おれ、カイジくんも和也様もだいすきだよ」 気を使ってるつもりか、質問の意図を理解してないのか。 どちらにしろ、俺にはその姿しか見せてくれないんだな。 「一条さん。好きなんだったらさ、俺のトコロにも戻ってきてよ」 近付いて髪を撫でると、一条さんは不思議そうな顔をする。 「なんの話?おれわかんないよ」 記憶が無いのか。昨日の事は。 まぁそうか。あるなら、もう戻っているハズだ。 「ねぇ一条さん。俺の事、どう思う?」 虚しいな。無い物ねだりは。 それでも、俺に素面であんな事を言ってくれたのは、アンタだけだから。 あぁそうだ。好きだったんだ。欲しかったんだ。アンタが。 だからこそ、アンタがこのままならいっそのこと…… 「和也様は、とっても優しくて、だいすき!」 「そっか」 髪を撫でていた手を、首に滑らせる。 そのままゆっくり力を込めていけば、一条さんは大きい瞳を瞬かせた。 「んっ…はっ…かずや…さまっ…!」 苦しげに掠れた声で、俺の名前を呼ぶ。 その瞳からは、綺麗な真珠みたいな涙がポロポロと零れた。 俺は優しくなんかない。 こうして、人の苦しむ様が好きで、もう何人も人の死ぬ様を見ている。 今さら躊躇いなんて無い。 そうだよ。こんなに綺麗な顔で死んでくれるなら、もっと早くこうすれば良かったんだ。 「やっ…くるし………!」 俺の腕に爪を立て、高い声で喘ぐ。 それはまるで情事の時の声の様で。 このまま捻り潰せば死ぬんだろうか。 一条さんが戻って来る事なく、死ぬんだろうか。 「ハッ…あぁっ……ゲホッ…」 無意識に首から手を離せば、一条さんは身体を折ってえずく様に息をする。 何故、離したんだろう。 最早、今まで通りに一条さんを懐かせる事すら出来ないのに。 「ほら、大声出しなよ。変な事されたら大声出す約束でしょ?」 俺が言えば、一条さんは息の荒いまま此方を見た。 「やはり、お優しいんですね。和也坊っちゃん」 口角を吊り上げ笑う一条さんは、壊れた時の顔じゃない。 「殺してしまいたい程、私を憎んだのでしょう?貴方の思い通りにならない私を」 徐々に、一条さんの息が整っていく。 「それでも、私を殺せないのは、まだまだ甘ちゃんだからですよ。和也坊っちゃん」 堂々と俺を見る一条さんが恐ろしくて、つい後ろに下がる。 それを見た一条さんは、柔らかく笑顔を作った。 「ですが、それで良いのですよ。まだ和也坊っちゃんはお若いのですから、いくらでも変わる事が出来るのです。そして、それが許される」 ゆっくりと一条さんが俺に歩み寄る。 そして、頬を優しく撫でた。 「親の真似ばかりしていては、いつまでも今のままですよ。いずれ、変わる事が許されない日が来る事を、忘れてはいけません。もしくは、組織が貴方に変わる事を強要してくる場合もあるかもしれません」 俺より背の高い一条さんが、微笑みながら俺に言う。 「這いつくばってでも、自分で切り開く勇気がなければ、いつまでもクソガキのままですがね」 両手で頬を撫で、その手が首へ滑る。 人の指とは思えぬほど冷たいソレは、首筋を撫でて滑り落ちた。 「私は貴方が、嫌いです」 そう言って微笑んだ一条さんは、怖いほど綺麗な笑顔を浮かべていた。 何も言えずに見詰めていると、一条さんはゆっくりと唇を重ねてくる。 壊れてから何度も重ねたハズの唇なのに、初めてのような感触に感じた。 再び一条さんが顔を上げれば、ふやけた顔に戻っていて。 「一条さん」 抱き締めれば、腕を背中に回してくる。 「なぁに?和也様。どうしたの?」 嬉しそうに頬を擦り寄せてくる彼に、一条さんが居なくなった事を知る。 あぁ、アンタは一体どうしたら、俺のモノになってくれるんだ…! 俺が欲しいモノはきっと、アンタが知っているハズなのに… 七 呼ばれて部屋に戻れば、一条が和也の膝に頭を乗せて甘えていた。 「一条」 俺が名前を呼べば、一条は犬みたいに駆け寄って来る。 「大丈夫だったか?」 頭を撫でながら聞くと、一条は笑った。 大丈夫って意味なんだろう。 「じゃあ俺は帰ろうかな…」 和也はそう言って立ち上がり、ドアの方へ向かう。 「和也様!また来てね!」 ニコニコしながら一条が手を振ると、和也が振り返って俺を見る。 「カイジさん。アンタは虚しくないのかい?こんな一条さんを相手にしてて」 その言葉に、ビクリと心臓が震える。 虚しいって思いは、きっといつもあって。 一条が元に戻る保証なんて、何も無いから。 それでも俺は…… 「それでも俺は、一条が好きだから」 俺が言えば、一条が「おれもすきー!」なんて言いながら抱き付いて来る。 和也は小さくため息を吐いて、ドアノブに手を掛けた。 「変わってるよ。アンタ」 そう言う和也の顔には、いつものにやけた笑みは無かった。 出て行く和也を見送り、傍らの一条を見る。 不思議そうに見てくる一条は、やっぱり俺の好きな一条とは違う。 だからって、目を背ける事は出来ない。 これは俺の罰だ。もう、許されようとは思わない。 でも、そんな事は建前で。 きっと俺は、ただ一条と一緒に居たいだけなんだ。 再び、一条が俺の胸に顔を埋める。 髪を撫でてやれば、幸せそうに一条が笑った。 PR |
カレンダー
プロフィール
HN:
宗雲
性別:
非公開
最新記事
(12/23)
(12/22)
(08/12)
(07/22)
(07/15)
(07/08)
(07/08)
(06/27)
(06/16)
(06/01)
カウンター
次は9000でリクエスト
P R
忍者アナライズ
アクセス解析
|