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地下から這い上がっても帝愛で怪しい仕事を続けている一条と、そんな一条をどうにかしたいカイジの開店小説です。

カイジの部屋に二人で居ますが、一条とカイジは同居してません。



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「なぁ、カイジくん。俺とキスしてみたくはないか?」

突然言われたその言葉に、俺は暫く押し黙ってしまった。


事の始まりは、俺が一条に安いビールを渡した事だった。
俺の家にそんなお高い酒が存在する訳も無いのに、一条はそのビールを見るや、色々と騒ぎ立てた。
内容は余り良い気分のする事じゃない。
そして一条は立ち上がると俺の部屋を出て、暫くすると一本のワインを買ってきた。

一条曰く、
「少なくともカイジくんが、二ヶ月は飲まず食わすで働かないと買えない代物」
らしい。
一度地下に落とされた一条がそんなワインを買えるなんて、どっから金が出てるのか。
まぁ、また帝愛と宜しくやっているそうだから、そっち方面で稼いでんだろう。
汚い金で買ったワインなのだ。
そう考えると、旨いらしいワインも飲む気が失せてくる。

ただそんな俺の感情は置いてけぼりに、一条は嬉々としてワインのコルクを抜いた。
ウチにワイングラスなんてある訳も無く、適当なガラスのコップにワインを注ぎ、一条は俺に突き付けた。

仕方なく俺が飲むと、一条もワインに口を付ける。
そうして、一条が主に飲み、そのワインの瓶を空にした頃だった。
あんな言葉を言ったのは。


頬を薄い桃色に染め、一条は得意げな顔をして俺を見る。
酔っ払いの戯れ言か。
それとも本気で聞いているのか。
どちらにしろ、酔いの勢いで言っているに違いない。
だが、ほろ酔い程度の一条に、下手な事は言えないのが正直なところだ。

確かに、一条は美人だ。
下手な女よりも断然綺麗で、髪も睫も長いし、唇も薄く綺麗な形をしている。
これで小柄だったなら、女と間違えても無理は無い。
だけど、やっぱり此奴は紛れもなく男で。

「何?どういう風の吹きまわし?」
一条が何の理由も無く、こんな事を言うとは思えない。
「質問返しはマナー違反だぜ。カイジくん」
今日の一条は、楽しそうに良く笑う。
それが機嫌の悪いサインや、嫌な事があった時のサインだなんて事は、普通の奴には伝わらないだろう。
「俺は、キスをしたいかしたくないか、それを聞いてンだよ」
だから要は、一条は今日、何か嫌な事があったって事だ。
でなけりゃ、俺にこんな事は聞かない。

「ちょっとくらい考えさせろよ」
出来れば答えたくなくて、そんな風に返事する。
したいと言えば怒るか、もしくは囃し立てるだろうし。
したくないと言えば、それはそれで怒りそうな雰囲気だ。

「カイジくん。君は馬鹿だなぁ。考えさせろだなんて、したいって言ってるのと同じだぜ?したくなきゃ、直ぐに拒否してみせるもんだ」
まぁ普通はそうだろうけど。
「迷うって事は、やろうと思えば出来る。それか、したいけれど言い出せない。そのどちらかだろう」
一条は小さくため息を吐き、数十センチ俺に近付いた。
元々小さいちゃぶ台を囲んでいたから、一条の顔と俺の顔は、本当に近くなる。

「カイジくんまで、俺の顔を許容範囲に入れてるとはな。幻滅したよ」
一条の手が、乱暴に俺の頬を掴む。
それでも、目と鼻の先まで近付けられた一条の顔は、やはり綺麗な顔をしていると思った。
「お前、男だもんな」
一条の手に押さえ込まれ、喋りにくいながらもそう言えば、一条は眉をピクリと動かす。
「当たり前だろ」
目を細めて、一条が呟く。

この、綺麗で女みたいな顔に、一条は今までどれだけ悩まされてきたんだろうか。
そりゃ有利に動いた事もあるだろうさ。
でも、その反動とも言える不利益は、普通の奴とは一画を引いているんだろう。

綺麗な顔ってのは、僻まれたり疎まれたりするモンだし。
帝愛に居るなら、売春だってあり得る。
何度此奴は、自らの身体を強要されたんだろうか。

「やっぱり俺、一条とキス出来る気しねぇや」
俺が言えば、一条は目を丸くする。
「どうした?いきなり意見を変えて……」
俺の言葉のせいか、爪を立て始めた一条の手をそっと握った。
「俺が、男だと再確認して萎えたか?」
出来るだけ優しく、一条の手を一条の膝の上に持っていく。
「……それとも…」
一条の目が、強い光を放つ。
「俺の身体が、汚れているからか?」

やっぱり、ソレだ。
お前が言いたいのは、吐き出したいのは、その部分。

「一条、俺は」
「そりゃそうだよな。いくら綺麗な顔してたって、今までどれだけの男のモノをくわえて来たか知れねぇ口に、キスなんかしたくないもんなぁ!」
今にも泣きそうな顔で一条は言う。
そうやって自ら遠ざけて、お前はどうしたいんだ?
少しでも軽くしたいのか?
相手から拒絶された時の傷を。

「違う。一条、聞け」
「何が違う!ふざけんな!」
声を荒らげ、一条は俺の胸ぐらを掴む。
憎らしげに、哀しげに俺を睨む一条は、すごく苦しそうで。
「俺は、お前を壊してしまいそうで、綺麗なお前を汚してしまいそうで怖い。だから、キスは出来ねぇんだよ」

図太そうに見えて、実は繊細な一条は、触れれば壊してしまいそうで、深いトコロに手を伸ばせない。
だが、きっとそれこそが、一条を傷付ける一つの原因でもあるのだろう。

「そんなの、嘘だ」
吐き捨てるように一条が言う。
「嘘じゃない」
「黙れ」
「一条……っ」
喋ろうと開いた俺の口に、一条が乱暴に唇を押し付けてきた。

その時に初めて見えた首筋の赤い印に、俺は今日の一条の態度の意味を知った。
そして同時に、一条がどうして欲しいのか、それも分かった気がした。

「カイジ」
縋り付くように、一条は俺を見る。
「俺を抱いてくれよ。カイジ」
上書き、とでも言うんだろうか。
掠れた声で言った一条は、瞳から一粒の涙を流す。
「一条…」
そっと手を伸ばし、一条の髪を撫でる。
すると、一条は俺の肩に頭を預けた。

一条の髪は艶があって、サラサラしていて。
こうして腕の中に納めてしまうと、本当に女みたいだ。
「いいのかよ。一条」
肩に手を伸ばせば、一条は小さく震える。
一条が抱いて欲しくても、俺はその先に行くのが怖い。
臆病。
そうかもしれない。
だけどやっぱり……。

「一条。俺は……」
俺が口を開けると、一条の肩が小刻みに震え出す。
そして、一条は勢い良く顔を上げた。

「バァ〜カ!何マジになってんだお前!」
目に涙を滲ませ、心底楽しそうに、一条は大声で笑う。
先程までの弱々しさも色気も吹き飛び、頬を紅潮させて笑い転げる様は、まさに酔っ払い。
「全部…演技かよ」
呆れて何も言えない。
「決まってんだろ!金にもなんねぇのに、お前なんかと寝るかよ」
金になりゃ、誰に抱かれようが気にしちゃねぇのか。
自然とため息が漏れた。


寝転がってまだ笑っている一条の首筋には、やはり赤い跡が残っている。
その跡は、金になったのか。
半分仕返しに、その首筋の跡を指で撫でてやった。
すると、一条はビクリと身体を震わせ、真っ赤な顔で俺を見る。
どうやら弱いトコロだったらしい。

「何だよカイジくん」
そう言ってくる一条も無視して、そこを指で撫で続ける。
「ちょっと待て!だめ…っカイジ!」
音立てて俺の腕を叩き、一条は急いで起き上がる。
顔は真っ赤で、瞳は潤ませ、唇は薄く開く。
その顔で稼いでいるのか。


そんな顔、俺以外には見せたくねぇのに。





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