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一条万歳様からのリクエストの、虚無の世界にて「カイジが一条の精神崩壊を未然に防いだ話」です!
正直、一条を抱いているのは、金持ち連中なので、やっつけるという描写はできなかったのですが、カイジさんには陰で頑張ってもらってます。
虚無とは違い、和一要素も取り入れる事ができませんでしたので、少々毛色は変わっております。
が、今回で一条さん目線も書く事が出来ましたので、自分としては三部作みたいで良いなぁとは思っています。

先ほど書き終わったばかりですので、誤字脱字のチェックがイマイチですが、気付き次第直していきたいと思います。

色々順序を踏んだ結果、異様に長くなってしまいましたが、お付き合い下さると嬉しいです。
あ、性行為の描写が多いので、R-18とさせて頂きます



コメレス

店長マジ天使様
コメントありがとうございます!
店長をなんとかした結果→地下落ち。


ゆき様
はじめまして。メールありがとうございます!
そんなに好きと言われると照れますね//ω//ふつつか者ですがよろしくお願い致します←
ただし村上は私の分身ですw



拍手







「這い上がって来い…!報復してみろ…俺に…!」

その言葉が唯一、俺に垂らされた糸で、それは恐ろしく細く脆い。
触れれば千切れそうな、そんな糸に縋り着き、俺はこの暗闇で生きていた。





貴方は虚無だと嘆くだろうか







目を開ければ、最早見慣れた白い天井が見えた。
身体は汗ばんでおり、節々が鈍く痛む。
キングサイズのベッドを起き上がれば、身体に出来た痣や傷に嫌気がした。
そのまま無機質な部屋を眺めていると、見計らったように黒服が現れ、風呂に連れて行かれる。

この生活が始まったのは、地下に行って暫く経った頃だった。
ほとんど説明の無いままあの部屋に入れられ、入って来た悪趣味な金持ちに無理矢理組み敷かれた。
抵抗はしたが、その前に飲まされた薬の影響か、上手く身体が動かなかった。
その時、俺がこの部屋に入れられた理由を知った。

確かに、あの地下にいるよりは命の危険は減るし、まだ良いモノも食える。
この顔のせいで、昔から俺の身体を使いたがるヤツはいた。
それでも、色を売る事はしなかった。しないと決めていた。
だが、俺はその行為を、強制される事になった。

それを理解した時、目眩と吐き気で倒れそうになった。
俺はこれから、男に抱かれて暮らすのか…と。

人を人とも思わぬ所業。
俺が言っちゃお仕舞いかもしれんが、俺は十分なほど帝愛に捧げて来たじゃないか。

キリキリと、他人の体液を流し込まれた胃が痛む。
俺が余計な事をしないように、黒服が風呂の中ですら付いてくる。
磨り減って行くのは、精神か、肉体か。
不意に吐き気がしてその場で嘔吐けば、黒服が淡々と俺の吐瀉物を処理していく。

こんな生活を続けるくらいなら、死んだ方がマシじゃないか。
脳に過りつつも、それを阻止する為に黒服は居るのだ。

部屋に戻って暫くすれば、再び金持ちであろう男が入って来た。
見れば既に昂っているのは明白で、すぐに組み敷かれて服を剥ぎ取られる。
そこにあるのは醜く腐った欲望だけ。
自らの快楽の為だけに行われる行為。
抵抗はしてみるものの、身体を押さえ付けられて終わり。
後は思うままに抱かれていく。

手入れをし、正しく回っていたハズの歯車が軋む音を、この耳の近くで聞いた。

もしもこのまま壊れて行くならば、あの男の事だけは、俺を此処に落としたあの男だけは忘れないでいよう。
報復する為に、もう一度あの男に会う為に。







「一条、調子はどうだ?」
「黒崎様…」
彼の姿を自分の目が捉えた途端、まるで骨髄反射のように立ち上がる。
身体はあの頃のように美しくは無いけれど、彼が俺をあの頃のように見る事は無いけれど。
「お前を庇う事は出来ないが、少々気になってな。差し入れだ」
そう彼が言うと、黒服がコーヒーを用意し始めた。
芳ばしい香りが漂い、懐かしい気持ちにさせる。
「嗜好品と言うのは、ここでは取れないだろう?」
「はぁ…お客様が酒を土産にして下さる事はありますが…」

そう言えば、俺があの日最後に口にしたのは、コーヒーではなかったか。
村上と話しながらコーヒーを飲むあの時間は、俺は嫌いでは無かった。
「好きだっただろう?さぁ、飲みなさい」
コーヒーの入ったカップを受け取り、口を付ける。
苦味が口いっぱいに広がって、思わず咳込む。
それでも、今まで飲んだどのコーヒーよりも美味しく思えた。

「どうだ?」
彼の声に顔を開けると、何故だか彼の身体の線や色がハッキリ見える。
「美味しいです」
俺が答えると彼が微笑んでくれる事がすごく嬉しくて、俺は思わず彼に抱き付いた。
「あぁ…!黒崎様!ありがとうございます…!とても嬉しいです」
背中を腕で撫でて、胸に頬を擦り付ける。
「大好きです!黒崎様ぁぁあ!」
身体の痛みも忘れて、彼の唇に必死で唇を付けた。
彼が俺から離れようとしている事は分かったが、俺は唇を舌で割り、彼の口内を貪った。

ついには黒服に引き剥がされたが、彼が愛しくて堪らない。
口から零れた唾液も舐め取り、俺は熱くなった身体を抱き締める。
「その様子なら、大丈夫そうだな」
彼は苦笑して、知らない男と入れ違いに出て行った。

「思っていたよりも美しいな。一条…」
男の手が、俺の身体に伸びる。
今日のお客様か。
いつもは嫌で堪らないが、今なら受け入れられる。
「お客様…もっと触って下さいませんか」
男の背中に腕を回し、反応している腰を押し付けた。

すると、冷静ぶっていた男も堪らず俺を押し倒す。
俺の身体に唇を何度も落とし、愛撫をしていく。
今までは気持ち悪いとしか思わなかったのに、その快感が身体中に突き抜けていく。
「はっ…あぁ…っ」
軽い愛撫だけで達しそうだ。
後ろから貫かれれば、思わず叫んでしまった。
そのまま尻を突かれれば、容易く絶頂に達した。

何でここまで気持ち良いのだろう。
黒崎様が来て下さったから?
どうしてこんなに気が昂るのだろう。
いつからこんなに…。

そうだ。あのコーヒーがきっかけだ。
「いいよ…一条、最高だ」
あのコーヒーを飲んでから、異様に楽しくて、元気が出て…。
おかしいよな?
あんなコーヒーだけで、こんな事になるなんて…
「このまま…出す…!」

もしかして、あのコーヒー、何か薬を入れられたのか?

「あっ…」
突然正気に戻った頭が、突かれる感触の意味を認識した。
「いや…いやだぁぁあ!抜け…!抜いてぇええ!」
叫ぶと同時に、ナカに熱いモノが注がれる。
その感覚だけで、思考が停止した。
「いやぁぁあ!離して!抜いてよぉおお!」
藻掻いて男の腕から抜け出そうとするが、後ろを貫かれたままでは上手く身動きが取れない。

「いっぱい出したから、妊娠しちゃうかもしれないね」
そんなふざけた事さえ判断出来ず、あるハズの無い恐怖が襲う。
もう男の射精は終わっていたが、注がれたモノの感覚がいつまでも思考を攫う。
「助けて…!やだぁ!うわぁぁあ!」
目からはボロボロと涙が溢れ、それを男は満足そうに見て笑う。

暫くすると男は性器を抜き、ぐちゃぐちゃに汚れた俺の顔を眺めてから部屋を出て行った。
何も出来ずに震える手を押さえていると、入って来た黒服に淡々と後処理をされた。
残されるのは、傷付いた身体と脳を支配する恐怖。

あぁ、あのコーヒーが欲しい。
あれを飲めばきっと、この恐怖も忘れるから。








ベッドに横たわってぼんやりと部屋を眺めていると、誰かが部屋に入って来る。
また客なのだろうなと頭の隅で考えるが、わざわざ起き上がる元気は無い。
目だけドアの方に向ければ、そこに居たのは和也だった。

「久しぶりだね。一条さん」
和也はそう言って、ベッドに放られた俺の髪を撫でる。
彼は、憐れむような、俺に何かを求めるような、そんな目をしている。
昔からそうだ。
このガキは、自分の胸の隙間を埋めようと、周りにちょっかいを出している。
残忍性や、やっている事は父親に似ているが、父親とは決定的に違う。
和也のやっている事は、程度は違えどただの反抗期のような、命の存在を知らないガキの遊びのような、その程度のモノだ。
だから俺は、コイツが嫌い。

「随分大人しくなったじゃない。かわいいよ」
ニヤニヤと醜い笑顔を浮かべて、和也は俺の身体に手を滑らせる。
それでも無視をしていると、和也がベッドに座った。
「ちょっとは反応してよ」
そう言って身体を揺さぶられ、漸く重い身体を起こす。
「疲れた顔して可哀想だね」
頬を撫でられ、ため息が出る。
「でしたら、休ませて下さい…」
和也の手を取り、得意の作り笑顔もせずに言う。
すると、和也は呆れたように笑った。

「アンタ、前みたいに面白くなくなったね。感情が薄くなった?」
こんなトコロで身体売らされて、感情なんか育まれるものか。
目を反らして黙っていると、和也の腕が下に伸びる。
「あぅ…っ」
「こっちなら、良い声出してくれるのかな?」
形をなぞる様に和也の手が動く。
その感触に、目に涙が滲んだ。

もう、誰もが俺をそういった道具としてしか見てくれないのか。
俺はもう人じゃないのか。

「おっ感じてる!本当にいやらしい身体だね。天職なんじゃない?」
最早勝手に快感を感じ取る身体は、和也に愛撫されれば簡単に熱を上げた。
「そう言えば、最近カイジさんに会ったよ」
その名前に、思わず目を見開いた。
和也は俺の反応が気に入ったのか、楽しげに笑う。
「アンタをここに落とした張本人だよね。だったら気にかけてそうなモンだけど…」
そうだ。あの男だけは、俺を忘れるハズがない。
あの頃の、まだ落ちぶれる前の俺を。
他の誰が、俺を道具だと笑っても。

「帝愛の事なら大体知ってそうな俺に、カイジさん、アンタの事なんにも聞かなかったなぁ…。普通、聞ける環境にあったら聞くモンじゃない?覚えてたらさ…」
噂話でもするように、和也は言った。
ただそれは、俺にとっては死すら意味するのだ。

あの男が俺を忘れていたら、俺は何の為に這い上がれば良い?
あの男が俺を忘れていたら、俺は何の為に報復すれば良い?
あの男が俺を忘れていたら、俺は何の為に生きれば良い?

あの男が俺を忘れていたら、俺は何の為にここに居るんだ?


耳元で糸が千切れる音がして、俺はその場で胃液を吐いた。







和也が来てからも生活は変わらなくて、垂らされていると思っていた糸は幻だった。
俺はもう何もかもが崩れた気がして、日々に身を委ねた。
そうして散々抱かれて寝た翌日、虫に喰われる夢を見て目を覚ますと、黒服が来て俺を立たせた。
「一条。君は今日のギャンブルの景品だ。だから身を整えなければならない」
黒服が説明する。

ついには帝愛からも売られるのか。
靄の掛かった頭でそう思う。

黒服に風呂へ連れられ、身体を綺麗にしたらスーツを着せられた。
和也が来た日から、自分で身体を洗う事すらしなくなった俺に、黒服は手際よく作業を進めていく。
昔よく来ていた色のシャツにネクタイを締められるが、嫌がらせとしか思えない。

身支度が済めば、部屋から出されて黒服に付いて行く。
入った時に通った鍵が幾つも付いた厚い扉を出れば、まるで知らない世界にでも来たような気分だった。
そのまま片方の壁が全面硝子張りな部屋に通され、そこにあるキングサイズのベッドに座らされる。
硝子の向こうには、此方より大きい部屋があって、そこに置かれたソファには和也と黒崎の姿が見えた。
向こうの部屋では、硝子に薄いカーテンが掛かっている。
俺は身体が怠くて寝転がろうとするが、黒服に止められて仕方なく座り直した。

そうして暫く待っていると、向こうの部屋に男が入って来るのが見えた。
その男の顔を認識した途端、身体中が粟立つのを感じた。
あぁ、あの男だ。
俺を殺したのは、あの男だ。
吐き気を感じて背中を曲げると、黒服が洗面器を差し出した。
俺はその中に、今朝黒服に食べさせられた食事をぶち撒ける。
その臭いと口に広がる酸っぱいような不快感に、俺は胃液しかなくなるまで吐いた。

大体の波が収まると、黒服は俺の口をゆすがせ、周りを綺麗に拭った。
硝子の方に目を向ければ、あの男は和也と向かい合って座っていた。
俺に何の反応もしないのは、向こうからは此方が見えていないからだろうか?
若しくは、俺など取るに足らない存在だからか。
目眩がしたが、やはり寝転がる事は許されなかった。

向こうの声は此方に聞こえない。
和也があの男に何か話しているようだが、何の話だろうか。
ギャンブルの話か?
自らが落とした男がギャンブルで売られる様を見せて、楽しもうって事か?

でも、もうどうでもいい。
再び大きな目眩がして、視界が暗転して消えた。
その時に見えたのは、男が沼の前に座る、あの時の光景だった。







「そう。ルールは簡単でしょ?しかも、今回は商品を選べる仕組み」
和也が楽しそうにルールを説明すると、黒服が台の上に札束を並べた。
「カイジさんがお金を選ぶなら、カイジさんが勝った分のお金をあげる」
札束をまるで紙くずのように俺の目の前に投げ付ける。
本当にこの和也って奴は、金の感覚が狂っている。
「金以外に、何を商品するんだよ」
和也の大袈裟な語りが面倒で、率直に聞いた。
すると、和也は悪戯でもしているガキのように笑う。

「もう一つは、コレ!」
壁に掛けられたカーテンを和也が引っ張ると、そこは硝子張りになっていた。
その硝子の向こう側にも部屋があり、中心にはキングサイズのベッドが置いてある。
ベッドに誰か横たわっているのに気付いて硝子に寄れば、それが誰なのか理解した。
「一…条…」
名前を呟いた瞬間、全身の血液が沸騰する思いだった。
「彼奴が…彼奴がどうして此処に居る…!」
あの頃と同じようにスーツを着て、綺麗な顔をした一条。
なのに、何かがおかしい。そんな気がした。

俺が睨み付けても、和也は笑顔を貼り付けたまま、部屋にはミスマッチなテレビを指差した。
そこから流れ始めたのは、今一条が横たわっている部屋よりも簡素な部屋で、一条が知らない男に抱かれている映像だった。
「一条さんはね、カイジさんの送られた地下じゃなく、他の場所でただただ色を売らされて生活してるんだよ」

知らない男に抱かれて生活する。
そんな事を、一条はずっと強いられていた…?
吐きそうになるのを堪えて和也を睨むと、和也はため息を吐いた。
「俺を恨むのはお門違いだって。実際この場所に一条さんを突き落としたのはカイジさん自身だし、その金を手に入れる目的だって、カイジさんの身勝手な理由からじゃない」
リモコンてバツリとテレビを消し、白けた顔で俺を見る。

「確かに帝愛は暴利かもしんないけど、連帯保証人にサインしたのはアンタだし、エスポワールで借金増やしたのも、アンタの采配による単なる自己責任。折角利根川さんに勝って手に入れた金を、親父に喧嘩吹っ掛けて失ったのもアンタの意思。それで膨らんだ借金なんて、もうカイジさんの責任以外の何物でもない…!」
リモコンをテーブルに置き、和也は硝子の前まで行くと、俺を真っ直ぐ見た。
「地下は余程ツラいトコロだったんだろうね。そんな自分のせいで膨らんだ借金を返す為に突き落とした相手が、一条さんだった。要はさ、カイジさんは自分で作った責任を、一条さんに全て押し付けて崖から落としたんだよ。だから、いくら崖の下が荒れた地だとしても、アンタに文句を言われる筋合いは無いね」
コンコンと硝子を叩き、和也は笑う。
色々と言い返す事は出来るハズなのに、俺は何も言えずに和也を見返した。

「さぁ、どうするカイジさん!一条さんなんて見捨ててお金を取るか、全てなげうってでも一条さんを救うか…カイジさんが決めていいんだよ。どうせ一条さんには事情を伝えて無いし、こっちの声は聞こえてないんだから」
蔑んでいたハズの和也の言葉は、一つ一つ嫌に筋が通っていて。
それで尚、俺に逃げ道を指し示す。
「でも言っちゃえば、勝負を受けて負けたのは一条さんだからね、カイジさんには関係無いか」
和也の腕が、俺の肩を抱く。
ベッドに横たわる一条を視界に捉えたまま、和也が囁く。
「これは裏切りじゃない」

絡み付く黒い感情が唆す。
『俺のせいじゃない』
正々堂々とは言えないが、それはお互い様で、戦って俺が勝って彼奴が負けた。
俺が彼処に居たかもしれない。
それならば、一条は鼻で笑って金を選んだ事だろう。
俺と一条はそんな仲でしか無い。

だったら俺だって…。

和也の腕に手を伸ばした時、目を瞑ったままの一条の口が、僅かに動いた。
気のせいかもしれない。
ただの俺の願望だったのかもしれない。
それでも、そう動いたように見えたのだ。
『カイジ…』
と、そう動いたように。

「一条…そうだ…一条を救っても余るくらい、勝ちゃいいんだろ…!和也!」
和也の腕を振りほどき、俺は言い放った。
一条は馬鹿だと笑うかもしれない。
だけど、俺は馬鹿で良い。

「一条を選ぶ…!」
裏切って欲しかったか?
それでも出来ないんだ。裏切るなんて。

一条をこのまま殺すなんて。








目を覚ませば、ベッドにカイジが座って髪を撫でているから、まだ夢なのだと理解した。
だって、カイジは俺の事を忘れているもの。
きっと俺の事、こんな優しい目で見ないもの。
「一条。大丈夫か?」
軍手をはめた手が優しく頬を包み込む。
カイジの手だ。金持ちの醜い手じゃない。

「カイジ…カイジ…」
ホロホロと涙が溢れて、カイジの手に頬を擦り寄せる。
「なんで俺のこと忘れちゃったんだよぉ…忘れないでよ…」
この汚ならしい手が、俺に差し出された唯一の救いだったんだ。
這い上がった先にこの手があるから、俺は生きてこれたのに。

「忘れてねぇよ…ずっと覚えてた。だからここに居るんだろ?」
夢じゃ意味が無いんだ。
現実で言ってくれなきゃ何にもならない。
目が覚めればまたあの生活が続くなら、甘い言葉は無駄なんだ。
「カイジ…もう無理なんだ…這い上がる壁すら用意されてないんだ…憐れに思うなら殺してよ」
そしたら、ずっとこの夢が見れるでしょう?

「ごめんな…無理だ…」
カイジの軍手が涙を吸って冷たくなる。
夢でも甘いんだな。
これが俺の願望だって言うのか…?

「死にたい死にたい死にたいっ…!助けてくれたっていいだろ…!」
叫びながら、カイジの身体を突き飛ばした。
そんな俺を、カイジは悲しそうな顔で俺を見る。
「どうせお前もそうなんだ…!俺を道具としか思ってないんだ!俺の事なんかどうでも良いんだ!」
そうじゃなきゃ、俺の事を覚えていてくれるハズだもん。

「カイジはもう…俺の事なんて待っててくれないんだ…」
次から次へと涙が溢れ、服を濡らす。
相変わらずカイジは困った顔をしていて、俺はその場に座り込んだ。
「一条。」
カイジの声がしても、俺はぎゅっと目を瞑る。
約束したのはカイジからだったんだ。
それなのに。
カイジは俺の事忘れて、地上でぬくぬく暮らしてるんだ…。

「カイジなんか…きらいだ」
会った時からずっと。
「あの時の言葉だって、本当はお前のこと殺したいほど嫌だった…!死ねば良いんだ!カイジなんて!ぜんぶぜんぶお前のせいだ!」
俺が叫ぶと、部屋がより一層静まる気がした。

「ごめんな…一条」
呟くようなカイジの声と、遠ざかる足音。
驚いて顔を上げれば、カイジがドアに向かっていた。
「やだ…」
口から零れたのはか細い声で、カイジは気付かない。
這うように起き上がり、必死でカイジに追い縋った。
「やだやだカイジ!行かないでよ…!一人にしないで…!ごめんなさい!ごめんなさい!嫌いにならないで!カイジ!」
もう訳が分からなくて、カイジを抱き締めた。
するとカイジは、優しく俺の頭を撫でた。

「大丈夫だよ。一条。嫌いになんてならないから」
柔らかい声でカイジが言うが、信じられない。
きっとこのままじゃ嫌いになる。
いや、もう俺の事なんて嫌いかもしれない。
でも駄目だ。カイジに嫌われたら俺は…
「カイジ」
カイジの服を掴んで、唇にキスをした。

「抱いてよ…カイジ。俺頑張るから。カイジに気に入ってもらえるように頑張るから…!抱いて」
そしたら、その間は俺だけ見てくれるでしょ?
必死で肌を寄せて、カイジの下半身に手を伸ばす。
だが、カイジはその手を振り払った。
「駄目だ。一条。もうそんな事するな…!」
カイジの目が怒っている。
こわいよ。
「お前の事だから、素直に伝えると怒ると思って黙ってた。でも、こんだけ壊れてりゃ、言うしかないな」
強い口調でカイジが言う。
捨てられるの?嫌われるの?こわいよ。

「一条。お前はもう、自由なんだ。俺がギャンブルで勝って…まぁ細かい話は良いとしてさ、お前はもうそんな事はしなくて良いんだ」
俺の身体を揺さぶって、カイジは言った。
でも、なんの事か分からない。
「じゆう…?」
何が?俺が?
あぁそうだ。これは夢だった…。
だから都合の良い事を言うんだ。
カイジが俺の為にギャンブルなんて受ける訳ないもの。

「夢じゃ意味無いよ…現実で助けてくれなきゃ…このままだもん」
俺が言えば、カイジは眉を寄せた。
「夢?」
どういう事だ?と、カイジは俺に言う。
そのままの意味だと言えば、カイジは顔を歪ませた。
「夢だって言うのか?この俺も、お前が自由だって事も」
カイジの問いかけに頷いて答えれば、右の頬が熱を帯びた。
それがカイジに叩かれたからと理解したのは数秒後で、理解すると共に涙が溢れた。
「いた…痛いよぉ…」
頬を自分の手で覆い、泣きじゃくる。
そうしていると、カイジは俺に肩を握った。

「これは現実だ…一条。お前は自由なんだ…もう、こんなところに居る必要は無いんだ」
力強くそう言われてカイジを見ると、カイジの頬に涙が伝っているのが見えた。
カイジはなんで泣いている?俺の為?
俺が何も言えずにいると、カイジは俺の身体を抱き締めた。
カイジの腕の中は、温かくて、頼もしくて、安心して。
無意識に腕をカイジの背中に回していた。
「一緒に、外に出ようぜ。一条」
耳元で囁かれたその言葉に、俺は目を瞑って頷いた。

まだ現実だとは信じられない。
俺が眠ったら、また元の世界に戻るんじゃないかって…。
それでもやっぱり、俺に伸ばされた手は彼の手だけだから、俺は彼に身を委ねてしまうのだ。
それが破滅に繋がったとしても。
俺は今まで、そうして生きてきたから。

「カイジ…俺のこと、好き?俺のこと捨てない?」
縋るように聞けば、カイジは俺の背中を強く抱いた。
「捨てないよ…俺は誰も…だから一条も、俺のこと裏切るなよ」
カイジの言った言葉の意味はよく分からなかった。
けど、俺は何度も頷いた。
俺がカイジを裏切るなんて、あるはずが無いから。








暫くカイジに抱き付いたまま過ごしていると、黒服が入ってきてスーツを手渡された。
急いでそれに着替えると、黒服に言われるままに手続きを済ませる。
書類の意味を考えるのは、カイジに任せた。
それが終われば、俺とカイジは車に乗せられる。
カイジは和也と何か話していたが、よく分からなかった。
ただカイジからは決して離れないように、俺はカイジの服を片手で握った。
それにカイジが気付くと、手を握ってくれた。

車で送り届けられたのは、ボロいアパート。
カイジに手を引かれて入った部屋は、六畳の和室にキッチンとユニットバスの付いた部屋だった。
部屋には敷きっぱなしの煎餅布団と、小さいちゃぶ台に小さい冷蔵庫くらいしか家具は無く、六畳でも充分広い。
布団の上に座ると、カイジがヤカンから直接コップにお茶を注いだ。
「飲めよ」
渡されたコップに口を付けると、ぬるいお茶が喉に染みた。
どうやら、知らない内に喉が渇いていた様だった。
すぐに飲み干した俺を見て、カイジは「猫でも拾ってきたみたいだな」なんて言って笑った。
だけど、俺が「犬とならよく言われる」と答えれば、カイジは途端に顔を強張らせて俺の頭を撫でた。
「ごめん」
カイジの謝る意味が分からない。
きっとそれは、俺がいらない事を言ったからなのに。
それでも、撫でられるのは嫌な気分ではなかった。

そうしてやっと冷静になった頭は、身体の倦怠感を伝えてきて、俺は布団に寝転んだ。
あの部屋のベッドに比べたら、床で寝るよりかはマシといった程度の布団だが、何だか懐かしいものは感じた。
「カイジ、何で俺なんか助けた」
横になったまま俺が聞くと、カイジは少し目を丸くする。
「這い上がって来いって言ったのはお前じゃないか」
先程みたいに自棄になっての言葉じゃなく、冷静にそう思った。
何でカイジは、俺に這い上がれと言いながら俺を引き上げたのか。
「あんなの、もう一人の力で這い上がれるもんじゃないだろ。それに、」
そこで切って、カイジは寝転んだ俺の頭を軽く叩いた。

「お前、もう殆んど借金返してたんだよ」
あと数千万くらいだった。カイジは照れくさそうに言った。
数千万でも、一般じゃ大金とは思うが。
「だから、俺は一条に比べたら全然なにもしてない」
なにもしてない?そんな事はない。
あの地獄に落ちてから、俺を人として保たせてくれたのは、カイジの言葉があったからだ。
あの言葉が俺に唯一垂らされた蜘蛛の糸だったんだ。

「あれ?」
起き上がり、カイジを見ていたハズなのに、無意識の内にカイジにキスをしていた。
俺が目を丸くしていると、カイジは眉を寄せた。
「なんだよ。今の」
聞かれたトコロで分かるものか。
本当に今のは無意識で、自分でも驚いているのだ。
「何だろうな…暫くずっと、こうして生活してたから、やっちまったのかな」
自傷気味に笑ってやれば、カイジはまた難しい顔をする。
柄にもないくせに。
いや、俺の前ではこの顔の時が多いか。
そんな意味の無いことを考えていると、カイジが俺を布団に寝かせた。

「疲れてんだろ。きっと。寝た方がいい」
カイジなりの気遣いだろうが、スーツのままでは寝心地が悪い。
それこそあの部屋で着ていた入院着の方が寝やすかったが、今はこのスーツだけが俺の服だ。
そう考えると、このスーツも皺になる前に脱いでしまった方がいい。
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを引き抜く。
寝転んだままスラックスに手を掛けると、カイジが俺の手を掴んだ。
「何してんだ!」
咎めるような口調にカイジの顔を見れば、意味を理解した。
「寝るのに、スーツじゃ嫌だろ?」
言うと共に、カイジの顔が情けなく変わっていく。

「すまん…俺本当にダメだな」
カイジは呟くように言って、押し入れの方へ向かう。
そして、比較的綺麗なスエットを取り出し、布団に放った。
「それ、今日は貸してやるからさ。着ろよ」
カイジなりの好意らしいが、正直スエットに着替えるのも面倒くさい。
スーツだけ腹の上で簡単にたたみ、下着だけで布団にくるまった。
カイジの抗議の声が聞こえて寝返りをうてば、まだカイジの顔が赤いのが分かった。
「何か変な感じするから、止めて」
男の身体で何をそんなに意識しているのか。
どいつもこいつも、俺を何だと思っているんだ。
カイジですら、そんな事を言うんだ。

何故だか無性に悲しくなって、俺はカイジから顔を背けた。
それには流石に焦ったようで、カイジは俺の近くに膝を付いた。
「ごめんな…一条、そういう意味じゃなくてさ」
良いんだ。別に。
どうせ俺はこんなお綺麗な顔だから、使ってみたくもなるんだろ。
そんな事は知っている。
カイジですら…

「なんだ…?」
腕を伸ばせば、カイジは不思議そうに言った。
なぁカイジ。カイジですら、この俺の身体で昂るのか…?
「もういい。抱けよカイジ。俺があの部屋の事を忘れるくらい」
その俺の言葉に、カイジは更に目を吊り上げた。
「折角、あんなトコロから出て来れたってのに…」
「だからだよ」
背中に腕を絡ませ、カイジを無理矢理布団に押し倒した。

「カイジは俺じゃあ、興奮しないか?違うだろ?」
腹に跨がり、カイジの服を肌蹴させて唇を落とす。
「なら抱けよ。俺にはこれしか出来ないんだ。どうせ女とは縁の無い生活でもしてんだろ?だったら存分に使え!」
高い金額で売ってた身体だ。満足させてやるさ。
叫ぶように俺が言えば、カイジは悲しげに俺の腕を掴んだ。
そして、そのまま俺を布団に倒した。
見上げたカイジは酷く辛そうで、頭が混乱する。

「一条、ごめんな…」
その謝罪は、何の意味を持つのか、何に向けられた言葉なのか分からない。
分からないが、何故か目から涙が溢れた。
「カイジ…」
俺の目から流れる涙を律儀に拭い、カイジが俺にキスをする。
唇が触れるだけの、軽いキスを。
こんな、壊れ物を扱うようなのは、初めてだ。
続けられるその優しげな行為に、俺は思わず目を瞑る。
怖いんだ。その優しさの先に、何か黒いモノがありそうで。

武骨なカイジの手が、俺の下半身に伸びていく。
下着を引き下ろされ、カイジの手が俺のモノに触れた時、俺は再び目を開けた。
そうして見えたのは欲に塗れた客なんかの顔じゃなく、雄々しく美しいカイジの顔だった。
「痛かったら言えよ?」
カイジの手が俺のモノを何度か扱いて、少しの硬さを持たせた。
最早、快楽を感じる事に長けたこの身体では、その丁寧さが毒に思える。
「流石にローションとかねぇし、大丈夫かな…?」
カイジの指が胸の先端を撫でると、身体が覚醒していくような気持ちだった。
「ひぁ…唾液でも…いいから…っ」
胸の先端を舌で転がし始めたカイジにそう伝えると、カイジは自分の指を念入りに嘗める。
その指を俺の後孔へと滑らせ、どうにか濡らそうとしていた。
こいつにもそういう知識というか、意識があるのだな。
まるで大切にされているようで居心地が悪い。

「ん…あんまり、触らなくていい…っ」
後孔を解すと同時に身体を撫でる手が、少しずつ俺の弱いトコロを突き止めて、嫌に感じてしまう。
こうして愛撫を受けるのなんて、相手が俺の羞恥心を煽る時くらいで。
ただそんな事よりも、この優しげな愛撫で感じる事の方が何倍も羞恥を感じる。
「けど、一条も気持ち良くないと、嫌だろ?」
その考えが間違ってるんだ。
こんな身体、そんな丁寧な事しなくたって感じるんだから。
「やめっ…イ…イッちまうからっ…あぁっ」
口の端から唾液を溢しながら言うと、カイジは一瞬手を止める。
「早くないか?俺、殆んど一条のちんこ触ってねぇよ?」
性器を触るかなんて問題じゃない。
あぁ、本当に恥辱的だ。
満足させてやるとは言ったものの、こうして組み敷かれてしまえばもう喘ぐだけだ。
あんな勢いで言うんじゃなかった。
カイジにこんな姿を見せて、情けなくて仕方ない。

「俺はもういいから…カイジのを…」
流れを切るように言って肘で身体を起こし、カイジのモノに手を伸ばして気付く。
「俺だってガチガチだから。本当…一条エロ過ぎんだよ…」
不貞腐れた声でカイジは言う。
それでも何もしないのは嫌で、俺はカイジのモノに指を這わせた。
「ちょ…」
やはりと言うか、挿入するには少々柔いそれを、指で扱く。
力加減は、嫌というほど叩き込まれた。
指を動かしながらカイジを見ると、カイジは真っ赤になった顔を手で隠していた。
「情けねぇ顔…」
そう言って笑ってやれば、カイジは俺を力任せに押し倒す。
更に、荒々しく指を後孔に差し入れる。
そうだ。そっちの方が良い。

「やっぱキツいな」
少しナカを広げようとしていた指が引き抜かれ、両足を持ち上げた。
「カイジ…あっ…止せ…ぅあ」
後孔に入り込む柔らかく粘着性のある感触に、背中にゾクゾクと快感が駆け抜けていく。
蕩けそうな思考で思い付くのは、これはきっと舌だということ。
「そんな事するなぁ…っ」
舌が後孔を濡らしながら、俺のナカを広げていく。
腰に広がる甘い痺れが、頭の中を掻き乱した。
「気持ち良いくせに、素直じゃないな」
よだれまで垂らして拒否する俺は、滑稽だろうか。
解された後孔に指を入れられ、ぐいぐいとナカを押されると、俺の身体は耐えきれずに欲を弾けた。

「はっ…あぁ…あ…」
感じ過ぎる身体が忌々しい。
「もうイッちまったのか」
快楽の波の中、そんな事を言われて俺は堪らなく自分が穢らわしく思えた。
「客には…好まれるんだけどな…っ」
顔を背けて俺が言うと、カイジが俺の足を肩に乗せた。
「一条。それ止めろ」
低いカイジの声に、俺は沼の時のカイジを思い出す。
尻を割られ、カイジのモノが俺の後孔を触った。
「これからは…俺の事だけ考えろ」
「ひあっ…あぁああっ…!」
ズプリと、後孔を開いてカイジのモノが入ってくる。
その圧迫感と腹の底から沸き上がる、本能に直接響くような感覚に声を上げる。
イッたばかりの身体には、それは強く鮮明に伝わった。

「カイジ…カイジっ…」
名前を呼んで、腕を伸ばす。
熱を感じるんだ。
性交による熱じゃなくて、客と寝た時には感じなかった熱を。
何なんだろうか…これは。
知らない。こんなモノは。

これが愛だというのなら、俺はきっと…。

「一条…好きだっ…」
真っ直ぐで、綺麗なカイジの目が俺を射貫く。
溺れるような快楽の中、俺は口を開いた。







「一条…本当に行くのか?」
寝癖を付けた頭で、カイジは心配そうに言った。
「こんなニートみたいな生活、一ヶ月も過ごした方がおかしいんだよ。カイジくんとは違ってね」
新調したスーツに袖を通し、髪を整える。
「けどさ、お前病人だったじゃん。今だって全快って訳じゃないし」
人を病人扱いしやがって…。
「働けるくらいには治ったら、働いた方がいいだろ」
自分自身に舌打ちをする。

情けない事に、俺が精神的に回復するまで、カイジが手に入れていた金で養われていた。
カイジの部屋に来て直ぐの時には、働くどころか何もする気が起きなくて、一日中寝て過ごす事もあった。
そんな俺をカイジは怒らず優しくしてくれて、俺はそれも嫌だった。
優しくされるような、そんな価値も無い存在だったから。

「それにしたって、またあんなトコロで働く事ないだろ」
カイジの言うあんなトコロと言うのは、帝愛の事だ。
「黒崎様が声をかけて下さったんだ。この歳での再就職だからな、選んではいられないさ」
なんだかんだで慣れた会社だからな。
そう俺が言うと、カイジは拗ねたような顔をする。
「安心しろよ。流石にそんな変な事は無いさ」
ポンとカイジの肩を叩いて鞄を手に取れば、カイジが後ろから抱き付いてきた。

「辛いと思ったら、すぐ止めろよ」
そう言って、カイジはせっかくセットした髪をくしゃりと撫でる。
ニートに言われちゃ意味ないな。
「あっ…おい!」
黙っていたら、カイジの手がスーツ越しに胸を触った。
明らかに、意識して。
「バカ…!なにすんだクズ!」
慌てて払い除けると、カイジが意地の悪い笑顔を浮かべている事に気付いた。
「前はあれだけで感じてたのにな」
朝っぱらから嫌な事思い出させやがって。
感情のままにカイジの頬を平手打ちすれば、カイジは楽しそうに笑った。

「そうそう…!それが一番一条っぽいぜ」
そのカイジの言葉で、俺は更に憤慨する。
なんでこんなクズみたいな男に、気を使われなきゃいけないんだ。
だけど…

「カイジ」
こんな男でも、俺を人として支えてくれたのはコイツだから。
「いつか…お前が俺の為に出した金額を返せたら、俺と勝負しろ」
いいや、そんな事は関係ない。
俺はきっと、カイジと対等にいたいだけなのだ。
「望むトコロだな」
嬉しそうに応えるカイジを見て、俺は思う。

この男に惚れたのは、いつからだったのだろうか。と。






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