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開店でらくがき短編。
同棲していそうでしてないのが好きだと気付いた。



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カイジは時々、俺を抱きしめて離さない時がある。
正直初めは金の無心でもしてくるのかと思ったが、どうもそういう訳では無いようだった。
取り敢えずその時というのが、俺が極度に疲れている時かカイジが疲れた顔で帰ってきた時だから、なんとなく理由は分かる。
だが、今日は違った。
俺は然程疲れていないし、カイジなんて現在絶賛ニート中だ。
疲れるハズが無い。
それなのに、カイジは俺が座るなり抱きしめて離さない。
こんなクーラーも無いような部屋で抱き付かれては、それこそ疲れる原因だ。

「カイジくん。離してくれないか?」
溢れる汗に耐えられず俺が言うと、カイジはムッとした顔をする。
拗ねているときによくする顔だ。
「いやだ」
カイジは腕の力を強める。
「あれだ。トイレに行きたい。離せ」
適当に理由を付けて離してもらおうとするが、何故かカイジが俺を抱きしめたまま立ち上がった。
そして、そのままトイレ方向に歩き始めた。

「ちょ…ちょっと待て!どうする気だ!」
嫌な予感がして聞いてみると、カイジは不機嫌そうな顔で俺を見る。
「トイレ行くんだろ?」
「馬鹿!離せ!」
予感が的中して、俺はカイジの腕を全力で振り払った。
「一体どういうつもりだ!」
三歩後ろに下がって言うと、カイジは小さくため息を吐いた。

「お前、俺が気付かないとでも思ってんの?」
カイジはダルそうに、胸の辺りを指差す。
自分の胸を確認すれば、そこはほんのり紅くなっていた。
「これも、仕事……」
「客じゃないだろ?今日は。お前疲れてないし」
見透かされている。
まぁ、いつもと様子が違えば自ずと分かるか。
「いつも言ってる、黒崎とか言うジジイか?」
半分当たりだが、
「黒崎様をジジイ呼ばわりするな!大体、黒崎様は俺なんか相手にしない!」
自分で言って、少し悲しくなる。
そんな俺を見てか、カイジは微妙な顔をした。

「じゃあ、何だよその跡」
「これは……」
つい、胸に手を当てる。
あの人がくれたこの唯一の熱で、俺が自ら慰める姿を、あの人の前で……。
カイジに言える内容じゃないな。

俺が言葉を詰まらせていると、カイジはまた俺を抱き締めた。
「カイジくん?」
背中をポンポンと叩くと、腕にまた力が入る。
「俺のだ」
消え去りそうな声でカイジが呟く。

「俺の一条だ…っ」

馬鹿だな。カイジ。
俺は誰のモノでもないし、そうやって懇願されたって、お前に俺の全てを預ける気は無い。
そんな安っちい言葉で、売れる程安くないんだ。この身体は。

「もう止めてくれよ。一条」
カイジの腕は強く、でも俺が痛くないように気遣われている。
触れた身体が熱い。
それはきっと、この部屋が熱いせいだ。
決まってる。

「………」
無言で、そっと抱き締め返す。
暑くて、汗が気持ち悪くて、最悪のハズなのに。
この腕の中が、何よりも居心地が良い。


「カイジ」
カイジ。カイジ。カイジ。カイジ!
俺はもう誰のモノにもなれないけど、俺を離さないでくれ。
お前にこの手を離されたら、俺はきっと……。

あぁ、そうか。
俺はこの男に惚れているのか。

俺も、カイジを強く抱き返した。
暑苦しいこの部屋で、安い愛情表現で。
それでも満たされるのは、きっと心底惚れているせいなのだ。







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工事中
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