管理人の腐った頭にご注意下さい。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 長くなるんで、書けたところから上げていきます。 ミステリーとか書いた事ないんで、頑張りますけどクオリティにはあまり期待しないでください。 カチャリと高い音を立てて紅茶のカップを置くと、麻雀牌を切り出した。 少し太陽の傾いた昼下がり、柔らかな光を受けた部屋で、ゆったりとした麻雀をする。 白衣を着た男の使用人が用意する紅茶と茶菓子はいつも美味しく、今日の胡麻味のマカロンには驚いた。 この邸の主人である老人は、こうして俺と麻雀するのが好きなのだと言う。 それは多分嘘ではない。 「隠居した爺には、この麻雀が一番の楽しみじゃわい」 老人は楽しそうに呟いた。 「隠居ね…本当にしてるかなんて分かったもんじゃない。案外現役だったりするんじゃない?」 探るように言ってやれば、老人は声を上げて笑う。 「なに、わしはもう死を待つのみさ…ほれ、ソイツでロンじゃな」 点棒を放り投げて、残った紅茶を喉に注ぐ。 空になったカップに、使用人がすぐさま紅茶を注ぎに来るのを眺めていると、老人は思い出したように口を開いた。 「そうじゃ、一つ頼み事を聞いてはくれんかね」 一 「カイジさん。遅い」 真顔で言われて睨み付ければ、赤木は飄々としながらバス停の椅子に座る。 「少しは自分で持てよ…!」 背中と右手に二人分の荷物を持ち、やっとの事でバスから出ると、赤木は何も聞こえないとでも言うように、何処かに電話をかける。 仕方なく荷物を置いて赤木の隣に座った。 周りを見ても、森や空き地しか無いような、田舎のバス停だ。 電話が終わると赤木は俺を見て、「カイジさんは力仕事の為に連れてきたんだから、仕方ない」なんて言うもんだから、つい殴りそうになった。 だが、これでも世話になっている身。文句は言えない。 元々赤木の元で働く事になった理由も、無一文で途方に暮れていた俺を拾ってくれたからだし。 暫くそのまま待っていると、この田舎には不釣り合いな、黒塗りの車がバス停前に停まる。 制服なのか、スーツに赤い蝶ネクタイをした男が車から下りて来ると、手際よく荷物をトランクに詰め、俺達を車へと案内した。 赤木からほぼ何も聞いていない俺は呆気にとられたが、俺の様子を見て笑う赤木に、故意なのだと知った。 「赤木、これから行くところって、何処なんだよ」 駄目元で聞いてみれば、赤木は小さくため息を吐いた。 「ちょっとしたペンションだよ。金持ちが好む系のね」 その説明で、嫌な予感しかしないのは、赤木と一緒にいるからだろうか。 快適な車の中、何もない山道を登って行く。 不快にならない程度の音量で流れるBGMは軽快で、乗客に合わせて選んでいる様だった。 本に没頭している赤木を尻目に代わり映えの無い景色を眺めていると、次第に目的としているペンションが見えてきた。 見た感じでは、年季の入った洋館と言ったところか。 二、三十年前ならば、華族が好んで使っていそうな佇まいだが、今の様子でもそうかと言われると微妙だ。 汚れが酷いとか、外装が壊れてるとかではないが、何となく煤けて見える。 これで閉鎖された洋館ってなら、一発で心霊スポットになるだろうという雰囲気だ。 「あそこが金持ちが好むペンション…?」 つい声に出すと、本を読んでいた筈の赤木が喉を鳴らして笑った。 「それなりの金持ちともなると、一つや二つ、人に聞かれちゃヤバい事をしてるモンだ。だから、この手のペンションが必要なのさ…」 分かったような、分からないような。 多分、分からない方が良いのだろう。 そんな事をしている間に、車はペンションの前にまわり、ゆっくりと停車した。 「お待たせ致しました。到着致しました」 運転手の男はそう言うと、先に車から下りて俺達のところのドアを開ける。 アカギに足を蹴られて車から下りると、ペンションから出てきた男が、俺達の荷物を預かった。 「お待ちしておりました。此方へどうぞ」 その男に案内されるままに着いてペンションに入ると、そこは外とは別の世界だった。 美しく彩られた内装に、行き届いた掃除。 高級感のあるソファーに、大理石で出来たテーブル。 あの薄汚れた外観からは想像の出来ない世界だ。 そうして、開かれたホールにある受付を赤木が済ませるのを待っていると、階段から人が下りてくるのが見えた。 その男は、黒い艶のある髪を揺らし、軽やかに赤木の元へ向かうと、綺麗な黒い瞳を細めて笑った。 「お待ちしておりました。赤木様」 女の様に美しいその笑顔につい見惚れてしまう。 その口振りから言って、彼はホテルの従業員なのだろうか。 「私は当ペンションの支配人、一条と申します。以後、お見知り置きを」 軽く会釈をした一条を赤木は一瞥すると、口元だけの歪んだ笑顔を返した。 「噂通りみたいだな…」 ギリギリ、隣にいる俺に聞こえる程度の声で赤木が呟く。 言葉の意味は分からないが、機嫌が悪くなったのは感じた。 「カイジさん、行こうか。部屋は二階だってさ」 受付から受け取ったカードキーを俺に見せ、一条の横を通る。 殆ど無視に近いその態度に、僅かに一条が眉を寄せたのが見えた。 二 部屋に荷物を置いて、ベッドの上に寝転がると、ようやく緊張が解れてくる。 突然連れて来られて、金持ちの隠れ家みたいな所で謎の心理戦を見せられて、堪ったもんじゃない。 大きく息を吐くと、ソファーに座っている赤木が俺を見た。 「カイジさん、ここに来た理由、知りたい?」 ニコリと笑って赤木が言う。 そんな時は、どうせろくでもない理由なのだ。 「いいよ。聞きたくない」 うつ伏せになって枕を抱く。 すると、後ろから赤木のため息が聞こえた。 「ならいいけど。一週間はここに居るから、早く慣れてよ」 一週間。そんな話は今初めて聞いた。 飛び起きて赤木を見れば、悠々と本の続きを読んでいた。 最初から、仕組んでたんだ…。 泣きそうになるのを堪えて、再び枕に顔を埋める。 最低限の情報しか無い中で振り回されるのはいつもの事だ。 だが、このキナ臭い屋敷に一週間詰め込まれるとは思わなかった。 早く用事が済めば良いのだが…。 鷲巣のじいさんの所で麻雀をしに行ったと思ったらこの騒ぎなのだから、大方じいさんに何か頼まれたのだろう。 あの邸に住むじいさんならば、このペンションを知っていても頷ける。 こんなペンションで行う頼まれごとなど知らない方が良いが、一週間も必要な事なのか。 横に顔を向ければ、このペンションの案内書が置いてあるのを見つけた。 その表紙には、『帝愛ペンション』の文字。 帝愛と言えば、有名な金融会社の名前だが、あの会社がこういう裏のホテルを作っていたとして、何ら不思議は無い。 彼奴らが悪どいことをしているのは、身をもって知っている。 とりあえずページを捲ってみると、無料で行っているサービスやホテル内の案内が書いてあった。 金持ちが来るだけあって、何か特別な部屋でもあるのかと思ったが、案内書を開いてみると、書庫やサウナ、せいぜいマッサージルームくらいで、目を引くような部屋は無い。 一つ変わった部屋があるとするならば、大部屋に取られた娯楽室。 しかもその横には、説明が付け足されている。 『23時〜5時の間、カジノとしての使用可』 やはり、金持ちの娯楽と言えばギャンブルか。 「カイジさん。カジノ行きたい?」 いつの間にか近くにいた赤木が、俺の顔を除きこんで言った。 突然の事に驚いていると、赤木は鞄から雑に札束を取り出すと、俺の目の前に投げた。その総額、300万円。 「な…何で…?」 いくら赤木の金銭感覚が狂っているとは言え、どうして突然。 「ここでカイジさんに300万を渡して、素寒貧で帰ってくるか、増やして帰ってくるか…それ自体がギャンブルだからね。俺は俺でやるつもりだし…」 酷い言われ方な気もするが、噛み砕くと「カイジさんはカイジさんで出来る事はやっておけ」という合図だ。 やっぱり何かあるんだな…このペンション。 300万を拾い上げ、時計を見る。 時計の針は6時を指していた。 今夜が勝負か。 三 「おや、カイジ様。遊びに入らして下さったのですか」 娯楽室の前、入ろうとしている一条に出会った。 昼に会った時と同じ笑顔を浮かべて、彼は俺を見る。 作り物の様に綺麗な笑顔。 ただ、それは本当に作り物な訳で。 「アカギ様は既に遊ばれているようですが…カイジ様は初めてでいらっしゃいますよね」 一条の大きな瞳が、俺の全身を見た。 赤木とは違った見透かされるような感覚に、全身が粟立つ。 「宜しければ、ご案内致しましょうか?」 一人でウロウロするつもりだったが、わざわざ説明までしてもらえるなら好都合。 「あぁ…頼むよ」 俺が言うと、一条はニヤリと笑う。 「それではどうぞ、此方でございます」 一条は言いながらドアを開け、中を手で示す。 その手に誘われて中を見れば、そこは他の部屋とは雰囲気がまるで違う。 静かに落ち着いた雰囲気のペンションに比べて、此処は欲望と興奮、気味の悪い執念、そんなモノが渦巻いているようだった。 見た目はそりゃ、普通にポーカーやルーレットをしているだけだ。 だが、金持ちどもの顔。それが違う。 熱が違う。 その象徴が、床にひかれた真っ赤なカーペットだ。 「カイジ様のご希望のレートどの程度で?ここのカジノは、お遊びの10倍から、勝負の100倍、物によっては狂気の1000倍もございますが」 随分と桁外れだ。 だが、それについていくだけの金を持った連中が泊まっているのだろう。 手持ちは300万。 必要以上に高レートには行けない。 「あぁ、赤木様は只今1000倍をお遊びになられているようですね。流石は、あの若さでこのペンションにお泊まり頂くだけの事はあります。鷲巣様の紹介というのも頷けますね」 一条の示す先で、赤木はルーレットをやっていた。 どうやら、客の希望でレートが変わるルーレットらしく、赤木の希望により1000倍まで引き上がったようだ。 この手のカジノのスタッフは、ルーレットの目など思い通り。 ただ単に確率のゲームではない。 言うなれば、勝ちたければディーラーの心を読まなければならない。 この、選択肢の多いルーレットで。 それはまるで不可能の様に思える。 昔賭場のチンチロで赤木が行った、丁か半かのギャンブルのように赤か黒かならもしかしたら分かるかもしれないが。 1000倍のレートに賭けるには、数字も当てる必要があった。 流石にそこまでは無理と思っているのか、一条も強い危機意識は持っていないようだ。 こいつは、赤木の事を本当には知らないから。 「館長…!」 ガタイのいい、他のヤツとはタイの色の違う男が血相を変えて一条に駆け寄ってくる。 そして、一条に耳打ちすると、一条の顔からも血の気が引いた。 赤木の方に目をやれば、此方を向いた赤木が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるのが見えた。 「カイジ様、少々失礼します…!」 駆け寄っていく一条に着いて赤木の元に向かえば、直ぐにその場に積まれたコインに気付いた。 最早どの数字の上に置かれているのかも分からないコインの山。 それを多分、1000倍レートの、数字一つに賭けようとしている そして多分、赤木は当てる。 顔面蒼白のディーラーがそれを示している。 一条もそれは察したようだが、此処は金持ち達が通う高レートの裏カジノ。 少し勝ったからと言って、イカサマでもなければ易々と追い出したりは出来ない。 だからこそ、見ているしかないのだ。 「やぁ館長さん。来てくれたんだ」 白々しく赤木は一条を見てそう言った。 「ここのカジノ、これが1000倍になったら払える?多分百億は下らないと思うけど…」 笑う赤木と対照的に、一条は目を大きく開き、額からは汗が流れた。 「助けてあげようか…?」 慈悲のようでいて、俺には悪魔の声に聞こえた。 ギャンブルで赤木がこんな事を言い出すならば、最初からこれが目的だったのだ。 「一条さん。アンタがこのコイン、買い取ってくれるなら良いよ。ただし、カジノじゃない…アンタだ」 無理だ。1000倍で百億ってことはつまり、既にコインは一千万。 おいそれと買い取れる額じゃない。 「赤木様…」 一条の握り締めた拳に、赤木は笑って一条を引き寄せる。 そして頬に手を滑らせると、滑らかな動きでそのまま口を付けた。 「なっ…」 慌てて一条が赤木を突き飛ばすが、赤木は一条に何枚かのコインを渡す。 「ねぇ、一条さん。アンタはいくらで売ってるの?」 その赤木の言葉に、一条の大きな瞳が更に見開かれる。 「何で…」 「おい!いい加減にしろ!」 一条と赤木の間に、一条の後ろにいた大柄な男が割り込む。 そのまま赤木の手を捻るが、一条がその手を止める。 「村上、止せ。お客さまに無礼な事をするな」 一条の強い言い方に、村上と呼ばれた男は少し迷いながらも手を離す。 チラリと一条は俺を見て、赤木に向けて口を開く。 「一千万…二人でお使いなら…丁度でございます…」 使うとか、人に対していくらかとか、何となく想像はついているが、赤木は一体何を考えているんだ。 「一条」 遠くから聞こえた男の声に、一条の体がビクリと震えた。 「黒崎様…!」 声のした方に目を向ければ、そこには仕立ての良いスーツを着た、少し年のいった男がいた。 黒崎という男を見た途端、赤木は小さく舌打ちをする。 「一条。一千万で私が君を買おう。それならば彼のコインを君は買い取れる筈だ」 「それじゃあこの男が買ったとは言えない」 一条と黒崎の会話に割り込み、珍しく苛立った様子で言う。 だが、黒崎は宥めるように笑った。 「君は彼に金を要求した。それが出来なければ自身を差し出せとね。ならば、彼が金を用意出来ると言うのなら、それがどのようにして手にいれた金かを気にするのは筋違いと言うものだ」 不敵に笑う黒崎の横に、後ろに付いていた黒服がアタッシュケースを置いた。 その中身は、多分金。 赤木は人を殺しそうな目で黒崎を睨むと、その目のまま俺の方を向く。 「カイジさん、俺先に部屋戻るから、貰っといて」 「ふぁい!」 心臓が止まりそうな気持ちで返事をする。 それを確認し、赤木はその目付きのまま娯楽室を出ていった。 「チビるかと思った…」 「一条。君には一千万分、働いてもらう」 黒崎の言葉に、意識が一条に戻る。 テーブルに残されたコインを回収するスタッフ二人を後目に、黒崎は一条の頬に手を伸ばす。 「黒崎様…申し訳ございませんでした…」 明らかに俺やスタッフへの態度とは違い、緊張と何か特別な雰囲気を持った一条に、何でか引っ掛かる。 「どれ程の失態か…分かっているだろうね」 黒崎は一条の頬を掴み、口に親指を差し込む。 「これが会長に知れたらどうなるか…想像出来ぬ馬鹿ではあるまい」 中途半端に開かれた口から、親指に添って唾液が落ちる。 「申ひ訳ありまふぇん…」 完璧を装った一条の、汚される姿。 それはいつもの笑顔が完璧に近いからこそ、落差が見える。 気高いモノが汚される事で感じる、快楽に似た感情。 自分自身が気持ち悪く、胸を押さえた。 周りを見れば、今の一条に魅入られている客が、何人か居た。 『ねぇ、一条さん。アンタはいくらで売ってるの?』 あぁ、そうか。 これも一種の宣伝なのだ…。 ギャンブルする気はもうなくて、黒服から金を貰ったら直ぐに娯楽室から出た。 静まり返ったホール。 置いてあるソファも、家にあるソファの何倍も良いモノに見える。 実際そうなんだろうが。 赤木の去り際から言って、機嫌が悪いのは分かりきってる。 そんな所に帰ったら、八つ当たりされるに決まってる。 ポケットから煙草の箱を出し、途中のを持ってきた事に後悔する。 一週間だと聞いて、どこに行くのかも聞いていれば、何箱か用意して来たのに。 流石に売店は無いようだし。 頼めば買ってきてくれるんだろうが、余りここの奴等とは関わりたくない。 貴重な煙草を一本取りだし、火を点ける。 「アイツ…」 一条って、やっぱりそうなのか。 あの、人を魅了する姿は、きっと受容が高いのだろう。 その辺の安い風俗とは違う、気高い雰囲気。 金持ちにはきっと気に入られているのだろう。 胸がざわつく。 気高い彼を汚したら、きっと大きな優越感があるのだろう。 醜く歪んだ、色への興味。 反吐が出る。 あの途中で来た黒崎ってやつは、一条の上司だろうか。 アイツがきっと、一条の全てを握っているのだろう。 下手すると、このペンション自体を。 短くなった煙草を、大理石で出来た灰皿に擦り付け、立ち上がる。 このペンションは、考えもしたくない事が多すぎる。 重いカバンを抱えて、俺は部屋に戻る覚悟を決めた。 四 柔らかいシーツが、身体を包み込む。 窮屈なスーツを脱ぐことは許されず、身を投げたこのベッドで、彼の横顔を眺めた。 そっと触れる手のひらに、心臓が二つの意味で跳ねる。 悦びと、恐怖。 「一条。君は美しい。君のその美しさは武器であり、私の自慢でもある」 彼の手のひらは優しく身体をなぞり、胸に添えられた。 「だがね、今日の騒動はいかんな…分かるだろう?」 「申し訳ございません…黒崎様っ…」 マゼンダカラーのネクタイが、彼に引き抜かれる。 彼の手であれば、どんな乱暴だろうと悦びに変わる。 それはきっと、殺されたとしてもだ。 それほど迄に私は彼が好きで、彼の所有物と化しているのだろう。 彼が笑ってくれるなら、私がいくら切り裂かれても構わない。 彼が栄光を掴む事は、同時に私の栄光でもあるのだから。 「私を失望させないでくれ…一条」 彼が私の髪を撫でる。 そのままずっと、触っていて下されば…。 「お慕いしております…黒崎様…」 貴方のその言葉だけで、私は人をも殺せるのです。 PR |
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