管理人の腐った頭にご注意下さい。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 間が空いてしまいましたが、続きです。 後、拍手漫画更新しました! 前回の続きになっております。前回分はサイトの方に更新しました。 気になる方はこちら→拍手を送る 九 ペンションの中のレストランで、サンドイッチを齧る。 昼飯から一々コース料理を頼むのが面倒で、スープとサンドイッチにコーヒーだけを頼んでしまったが、周りは優雅に食事を楽しむ金持ちばかりで浮いてしまう。 まぁ、コース料理を頼んだって、赤木がいなけりゃマナーも何も分からない。 むしろ、何であいつは知ってるのかが不思議だ。 出来るだけ周りを気にしないように、サンドイッチを咀嚼していると、自分の前の席に赤木が座った。 「美味しそうじゃない…サンドイッチ」 会って早々、皮肉か。 赤木はコーヒーだけ頼むと、何故か俺のコーヒーに砂糖を入れた。 「どこ行ってたんだ?」 好みよりも甘くなったコーヒーを啜る。 赤木はズボンのケツに挟んでいた雑誌をテーブルに置くと、ため息を吐いた。 「別に、雑誌を買ってただけ」 テーブルに置かれた雑誌は、どうやら三流のゴシップ雑誌のようで、とても赤木の興味を引きそうな雑誌ではない。 「この雑誌がどうかしたのか?普段買わないだろ」 残りのサンドイッチを口に放る。 その様子に、赤木は静かに笑った。 「まぁ、知り合いの記事があったものでね。特に意味は無いさ」 それにしても、こんなところでそんな三流の雑誌が買えるモンなんだな。 「どこで買ったんだ?それ」 「買ってきてもらうよう頼んだんだけどね、丁度これだけあったらしい。どうやら、手違いで注文してしまったそうだよ」 タイミングが良かったんだと、赤木が言う。 手違いで注文するような雑誌とも思えないが。 コーヒーでサンドイッチを流し込み、一息吐く。 「それにしても、カイジさん。アンタやっぱりこの事件に首突っ込んでるみたいだね」 「えっ…」 驚いて赤木を見ると、赤木は涼しい顔でコーヒーを啜っていた。 「まぁ、アンタ一人でやる分にはどうでも良いけどね。人の迷惑だけは考えてよね」 人にそんな事言える人間か…! けど、それは十分理解してる。 それでも、何かしたくて。でも、出来る事は限られてて。 「赤木…お前さ…本当に一条が殺ったと…そう思うか…?」 俺の問いに、赤木は少し間を開けて「さぁね」と小さく呟いた。 「ただ言えるのは、どちらにせよ彼が原因だろうと言うことかね…」 それだけ言うと、赤木は小さなメモ書きを俺に差し出す。 紙は部屋に置いてあるペンションのメモ用紙のようだった。 「それ、カイジさんに飲ませた薬の名前と、量と時間ね」 そうだった。 コイツ、俺のこと実験台にしたんだった。 メモ書きには、片仮名の見たことのない名前が書いてある。 「クロロホルムじゃないんだ…」 名の知れた麻酔薬を呟くと、赤木は鼻で笑う。 「クロロホルムは吸引でしょ?まぁ、飲みたいなら飲んでも良いよ。死ぬけど」 平然と怖いことを言われて、頬が引き攣った。 十 きっと、俺が悪いのだ。 安いベッドが、俺の動きに合わせて悲鳴を上げる。 その音がまるで、俺を責め立てる様だった。 あの夜、彼は俺に言ったのだ。 懺悔の言葉を。 そして、残酷な決断を。 目を瞑り、枕に顔を埋める。 彼の死に顔が目に焼き付いて離れない。 冷たくなった彼の体温が忘れられない。 数時間前は俺を愛してくれていた筈の彼の体温が。 ナイフを彼に刺したのはきっと、俺なのだ。 「館長」 心配そうな声と、抱えたミネラルウォーターに気付け薬。 大柄な体で大事に抱えている様子は、見ていて少し滑稽だ。 「起きましたか…どうぞ」 柔らかく笑って、彼はミネラルウォーターを手渡してくる。 普段は、威嚇する様に俺の傍らで周りを見回す彼だが、身内に対しては時折こういった顔を見せる。 有り難く受け取り、ペットボトルに口を付けた。 直前まで冷蔵庫に入れてあったのか、キンと刺すような冷たさが喉を通る。 彼は、まだこういう所で気遣いが追い付いていない。 「どうなってる」 敢えて主語は入れずに言った。 すると彼は、隠し事のバレた子供の様に眉を下げる。 似合わない作り笑顔まで浮かべて、厭に気遣った様子だ。 「大丈夫です。どうにか客も抑えられましたし…警察は呼んでいません。その代わり、帝愛にあの方は引き取られて行きましたが」 あの方。 彼が触れたのは、俺が最後だっただろうか。 昨日、彼が唇を落とした所を触れる。 彼が最後に見ていたのは、本当に俺だったのだろうか。 「分かった。俺はもう大丈夫だ。任せて悪かったな、ご苦労さん」 彼の肩を叩くと、心配そうに俺を見つめる。 犬だな。まるで。 「大丈夫だから」 優しく笑って、近くのテーブルにあった鏡を取る。 酷い顔だ。 あのまま気絶してしまったせいで、髪もグシャグシャ。 そうだ…。 「村上、お前がコレ着せてくれたのか?」 肩幅の少し広い、白いYシャツ。 俺の手持ちにこのテのモノは無いから、彼のだろうか。 すると彼は、耳まで赤くして目を伏せる。 「その…あのままでは…流石に…」 裸とは言葉にしない辺り、彼の感情はすぐ分かる。 「ありがとな」 俺が言ってやるだけで、彼は大変嬉しそうに頬を緩めた。 馬鹿な男だ。 いや、それはきっと俺も同じか。 改めて鏡を覗けば、彼は内ポケットから櫛を取り出して、馴れた手付きで俺の髪に櫛を通す。 「痛かったら、言ってくださいね…」 こんな芸当、いつの間に覚えたのか。 鏡越しに彼を見ると、彼は酷く緊張した様子だった。 彼は俺の犬だった。 目を瞑ると、彼が戸惑いの息を吐く。 図体はデカいクセに。意気地無しめ。 ベッドの軋む音がして、俺はゆっくり目を開ける。 カーテンを閉めた窓からの光は、少し頼り無い。 「着替えを、取ってきてくれ」 伸ばされた腕に目を向けず、それだけ言えば、彼は名残惜しげに眉を歪め、腕を下ろした。 「分かりました」 普段通りの無駄にデカイ声が、寧ろ今は不自然に聞こえる。 彼は俺の犬だった。 少なくとも、昨日までは。 十一 「やっぱり、梯子の跡とか無いな」 屋敷の裏手、事件のあった部屋の窓の真下に来ていた。 そこは近くに森があるせいか、長年の落ち葉が土になっていて軟らかい。 梯子を立てて上ろうモンなら、確実に跡が残る。 もしくは、それを誤魔化した靴の跡でも残ってないかと思ったが、そう言ったモノは見当たらない。 まぁ、そんなモノが残っていたら、あの窓からの侵入だって言っている様なもので、あんな密室を作り出したにしては気が抜けすぎている。 「窓からの侵入も不可って事か…」 それにあの部屋に入ったとき、窓は閉まっていた様にも思える。 村上って奴が、窓の鍵を開けているのを見た気がする。 となると、ドアの鍵の開け方、他の出入り口の可能性を考えるべきだろうか。 それこそ赤木の範疇なのだが。 「アレ?何だあれ」 ふと視界に入ったモノに手を伸ばす。 屋敷の壁に這った植物のツルに絡まったそれは、薄い茶色をした一枚の紙だ。 何かの包み紙の様な素材だが、飛ばされて来たのだろうか。 何にしろ、ただのゴミには違いないか。 ただ、どこか気になって見てみると、その紙にはある会社名が書いてあった。 しかし、どこで見た会社名だったか。 思い出せず、取り合えずそれを持ってペンションに戻った。 さて、ここからどうしようか。 行き詰まって、それならばと現場に向かってみる事にした。 今なら、まだ何か残っているかもしれない。 死体を見て直ぐでは、見落とした事もあるかもしれないし。 見張りでも居て入れない可能性も高いが、それならそれだ。 絨毯の敷かれた階段を上り、現場となる部屋に向かう。 外に見張りの様な人はいない様だ。 鍵は壊した筈だし、不用心だと思うが…。 「入りますよぉ~」 誰に言う訳でもなく、そろりとドアを開ける。 顔を奥の部屋に向けると、ドアが開いたままなせいで血溜まりが直ぐに視界に入る。 しかし、そこにあった死体は消えている。 救急車や警察を呼んだ訳では無いようだから、バックの帝愛が処理したんだろう。 死体の処理なんて、彼奴等ならお手の物だ。 胸を何かが這うような不快感に、軽く拳で叩く。 気を引き締めて足を前に出すと、奥の部屋の死角から腕が伸びた。 人が居たのか。 場所が場所だけに、心臓がヒヤリとした。 どうせここの従業員だろうし、早々に出るべきか。 迷っていると、腕の主がその絨毯へとゆっくり倒れ込む。 絨毯に広がるその美しい黒髪は、見間違える事はない。一条だ。 「…カイジ…様」 寝転がった一条は、虚ろな瞳で此方を見る。 そして気だるそうに起き上がると、髪を手櫛で整えた。 「ここで、何をしていらっしゃるのですか…?」 それは、従業員としての言葉では無かった。 言うならば、純粋な嫌悪。 自分の大切な場所に、知らぬ男が入って来た事への拒否反応。 「あの男が…あの男を殺したのが誰なのか、それが知りたいんだ」 警察に連絡していないなら、一条が捕まる事も無いんだろう。 それでも、放ってはおけない。 「犯人探しと言う事ですか…それならもう分かっていますよ」 一条は、客前で見せるソレとは違う、草臥れた笑みを浮かべる。 「私が殺したんです」 か細く言ったその声が、言葉が、頭を殴られた時の様に響いた。 「本当に…一条が…彼奴の背中…刺したのかよ…」 何度も吃りながら、言いたくない言葉を口に出す。 一条は寂しげに絨毯を見下ろすと、固まって変色した血溜まりを優しく撫でた。 「俺が刺したんじゃない…でも、俺が殺したんだ…」 「どういう事だよ。刺してないなら、殺して無いだろ!」 「それでも、俺が殺したんだ」 煮え切らない一条の態度に、つい大声を出すが、一条は気にせず目を閉じた。 「帝愛もきっと、そう思ってる」 多分それは一人言として呟かれた言葉。 それでも、聞き逃してはいけない言葉だった。 帝愛が、幹部を殺した男をそのままにして置くだろうか…。 いいや。あの意地汚い執念の持ち主である男が、放っておく筈がない。 それでも、一条は受け入れようとしているのか。 その、絶望に身を任せて…。 無意識の内に握り締めていた拳に、痛みを感じて気付く。 目を開けようともしない一条は、もう何も見えないのだろう。 そんな一条が憐れで、そして何故だか美しく思えて、これが女なら、きっと惚れているに違いない。 「俺は、お前の事、信じてるから…」 精一杯の勇気で、それだけ言って部屋を出た。 一条は犯人じゃない。 それだけを強く信じて。 PR |
カレンダー
プロフィール
HN:
宗雲
性別:
非公開
最新記事
(12/23)
(12/22)
(08/12)
(07/22)
(07/15)
(07/08)
(07/08)
(06/27)
(06/16)
(06/01)
カウンター
次は9000でリクエスト
P R
忍者アナライズ
アクセス解析
|