管理人の腐った頭にご注意下さい。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 今回は、まさかの村一小説です! 開店ではなく村一! 自分でも想定外! 村一は結局、同僚以上、恋人未満が理想です。 んで、踏み込めない間にカイジなんてガキにかっさらわれる訳ですよ。 馬鹿ですね。 まぁ今回は両思いなんでちょっと違いますが カイジがうんぬん言う前の、平穏(?)な時の村一です。 深夜と呼ぶに相応しい時間。 客もいなくなり、裏カジノの特殊な喧騒も消えた頃。 そろそろ閉店だな。 最後の見回りに、スタッフも捌けたカジノを一人で歩いた。 熱の冷めたカジノは何だか異様で、シンとした空気がどうにも恐ろしい。 「店長。見回りですか」 久しぶりの自分以外が発した音に驚き、音のした方を見る。 「村上…何やってんだ?」 カジノ内の、客が一休みに立ち寄るバーの中に村上が居た。 普段なら、そこには決まったバーテンダーが立っている。 「いやぁ、ちょっと酒でも飲もうかと思いましてね。店長もどうですか?」 村上はカウンターに、ロゼ・シャンパンと、赤い液体の入った瓶を置いた。 「何だ?カクテルでも作ってくれるのか?」 カウンター席に座り、村上を見上げる。 他に誰も居ないカジノの中、村上と二人でバーのカウンター越しに見詰め合う。 そこは普段から居る場所で、村上とは毎日一緒に仕事をしているというのに、今の村上の姿は何だか初めてみる男のようだ。 「ま、一応シェイカーは使えますよ。前にバーテンダーに教わりましたから。何か注文は?」 村上は上着を脱ぎ、俺の隣の席に放った。 「注文したら作れるのか?」 「いや、無理ですね」 カラカラと、村上は喉を鳴らして笑う。 そしてシェイカーを取り出し、赤い液体と後から出したグレープフルーツジュースをシェイカーに注ぐ。 「結局オリジナルか」 氷をシェイカーに落とし、上を閉じる。 その流れは、どうも慣れているように見えた。 「勘弁して下さいよ。店長に注文なんか聞いたら、俺の知らない名前のカクテルとか言い出すでしょう?」 シェイカーを両手で持ち、左胸の前に持って来る。 「よくわかったな」 俺が笑えば、村上は苦笑いでシェイカーを振り始めた。 氷と液体が、綺麗に一定の音を響かせる。 この音は嫌いじゃない。 真剣にシェイカーを振る村上の姿も、俺は嫌いじゃないと、そう思った。 「様になってるじゃないか」 首元のタイも、良い雰囲気を出している。 「そうですかね」 シェイカーを下ろし、グラスに混ざった液体を注ぐ。 そこに、シェイカーの中の氷を落とした。 「シャンパン、開けても大丈夫ですかね?」 ロゼ・シャンパンの瓶を手に、村上が言う。 まぁ、ちょっと飲む程度だと考えると、シャンパンはまだ高いからな。 こんな店のじゃ尚更。 「この後、特に用が無いならいいんじゃないか?お前の奢りだろ?」 分かって言ってやれば、村上はゆっくりと瓶をカウンターに置いた。 「違うのにしますか……」 全く分かりやすい! 「馬鹿。冗談だ。俺が出すから開けろ」 一通り笑って、村上に言う。 別に、俺だってポンポン買える訳じゃないが、水を差すような事はしたくない。 「すいません」 村上は小さくそう呟き、ロゼ・シャンパンのコルクを抜いた。 そして、バースプーンに沿わせてロゼ・シャンパンをグラスに注いだ。 「意外と綺麗なカクテルを作るじゃないか」 差し出されたグラスに入ったカクテルは、先に入れた液体の深い赤と、ロゼ・シャンパンの淡いピンクで美しいグラデーションを作っている。 ベリーの飾り付けも、良いアクセントだ。 「正直言うと、作り方はかなり適当ですけどね。分かるのは、シェイカーの持ち方くらいです」 照れ笑いを浮かべる村上は、自分のグラスにはただロゼ・シャンパンを注ぐ。 「お前は飲まないのか。カクテル」 そうなると、少々味が心配だ。 「店長の為に作ったカクテルですから」 ニコニコと笑って、村上はグラスを浮かせる。 乾杯しようって事か。 「女が相手なら、口説き落とせたかもな。ソレ」 自分もグラスを浮かせ、村上のグラスに軽く当てた。 「トコロで、最初の赤い液体って何なんだ?」 見た感じ、濃度の高いシロップのようだったが。 「あぁ。それならザクロのリキュールですよ」 ザクロの赤か。珍しいな。 一口飲んでみる。 少し濃い気もするが、まぁ美味しい。 でも商品にはならないな。 「店長、結構美容に気を使ってるでしょう?だから使ってみました。ザクロは美容に良いんですってね」 してやったりと言った顔で、村上が言った。 本当に俺の為に作ったカクテルなんだな。 しかも、どうやら今考えた訳じゃ無さそうだ。 「だから、男の俺より女に使えって!その手は!」 俺だって、ちょっとクラッと来たんだ。 女なら落ちるに決まってる。 村上はロゼ・シャンパンを飲み、喉を鳴らして笑った。 「今は、女じゃ相手が居ませんよ。俺が落としたいのは店長ですから」 よくもまぁ、いけしゃあしゃあと言えるもんだ。 「止めろよ。本気にするぞ?」 悪い冗談だ。気色悪い。 「良いですよ。本気にしても」 いきなり落ちた声のトーンに、俺は村上を見上げる。 笑みを浮かべる村上は、冗談のようでいて目は挑戦的だった。 「馬鹿か……」 そんな顔されたら、本気になるしか無いじゃんか。 返答はどうあろうと。 「店長!そんな真面目な顔しないで下さいよ。冗談です」 一瞬引き締まった空気を壊すように、上擦ったテンションで村上は言う。 馬鹿だ。此奴は。 いつからの付き合いだと思ってるんだ。 お前のクセも、最後の最後で押しの弱いトコロも、全部分かってる。 本気で言ったクセに、お前は怖くなって逃げたんだ。 ヘラヘラとした笑顔を浮かべる村上から目を反らし、カクテルを口に流し込む。 やはり濃い。 せっかくのロゼ・シャンパンなのにな。 「村上。そっち寄越せ」 村上のグラスを取り、純粋なロゼ・シャンパンを飲む。 やはり旨いな。 「……カクテル、美味しくなかったですか?」 心配そうに、村上が言う。 不味いんじゃない。 「濃いんだよ。ザクロの味が」 それがまたお前らしくて。 「でも、好きだよ」 お前の……。 「店長…」 「何真面目な顔してんだ?カクテルの話だよ。カクテルの」 戸惑いと期待の混ざった表情の村上に、俺もふざけ返してやった。 村上だって馬鹿じゃない。 俺の考えも見抜いているだろう。 だが、お前なら分かっていても、分からないフリをしてくれるだろ? 「口に合ったなら、良かったですよ」 柔らかく、村上が微笑む。 「さっ!シャンパン開けちまったし、今日は飲むぞ!」 いつも通りに笑って、村上のグラスにロゼ・シャンパンを注いだ。 これで良い。 想いを確かめ合ってしまえば、きっと俺達は今のままではいられないから。 「村上」 俺が名前を呼べば、村上はグラスをカウンターに置く。 「このカクテル。俺の為に作ったなら、俺以外には作るなよ」 カクテルの入った自分のグラスを指で弾けば、高く綺麗な音がした。 村上は小さく笑い、隣の席に置いてあった上着に手を伸ばす。 「作りませんよ。貴方以外には」 耳元で、囁くように村上は言った。 まるで、上着を取るついでと言ったように。 「やっぱり旨いですね。ロゼ・シャンパン」 正面に戻り、ニコニコと笑う村上はいつも通りだ。 グラスに残ったカクテルを飲み干し、自分のグラスにもロゼ・シャンパンを注ぐ。 この後は、いつも通りに下らない話でもして。 これまで通り、気付かないフリをし続けるんだ。 そうでもしなきゃ、もう一緒には居られないから。 きっと、俺達は臆病なんだ。 変わってしまう事に対して。 「店長」 呼ばれて顔を上げれば、村上が俺の唇に指を添えた。 「俺、店長の事好きですからね」 心臓が、大きく跳ねる。 何言ってんだ此奴は。 「バ〜カ」 村上の手を押し退け、俺は笑う。 「俺も好きだよ。村上の事」 決して、本心は出さぬように。 表情は乱さぬように。 一瞬、哀しそうな顔をした村上は、ゆっくりと手を戻した。 「まぁ、飲みますか」 グラスの中で、ロゼ・シャンパンの泡が弾ける音がする。 互いに敬遠し合う俺達は、きっと人から見れば酷く滑稽なのだろうな。 二人きりの時間は、安心するようで、一定の緊張がある。 この均衡こそが、もしかしたら一番好ましいのかもしれない。 「村上」 呼べば俺を見てくれる、そんなお前を離したくない。 そう思う俺は、我が侭なんだろうか。 拍手を送る PR |
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