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今回は、まさかの村一小説です!
開店ではなく村一!
自分でも想定外!

村一は結局、同僚以上、恋人未満が理想です。
んで、踏み込めない間にカイジなんてガキにかっさらわれる訳ですよ。
馬鹿ですね。
まぁ今回は両思いなんでちょっと違いますが

カイジがうんぬん言う前の、平穏(?)な時の村一です。



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深夜と呼ぶに相応しい時間。
客もいなくなり、裏カジノの特殊な喧騒も消えた頃。

そろそろ閉店だな。
最後の見回りに、スタッフも捌けたカジノを一人で歩いた。
熱の冷めたカジノは何だか異様で、シンとした空気がどうにも恐ろしい。

「店長。見回りですか」
久しぶりの自分以外が発した音に驚き、音のした方を見る。
「村上…何やってんだ?」
カジノ内の、客が一休みに立ち寄るバーの中に村上が居た。
普段なら、そこには決まったバーテンダーが立っている。

「いやぁ、ちょっと酒でも飲もうかと思いましてね。店長もどうですか?」
村上はカウンターに、ロゼ・シャンパンと、赤い液体の入った瓶を置いた。
「何だ?カクテルでも作ってくれるのか?」
カウンター席に座り、村上を見上げる。

他に誰も居ないカジノの中、村上と二人でバーのカウンター越しに見詰め合う。
そこは普段から居る場所で、村上とは毎日一緒に仕事をしているというのに、今の村上の姿は何だか初めてみる男のようだ。

「ま、一応シェイカーは使えますよ。前にバーテンダーに教わりましたから。何か注文は?」
村上は上着を脱ぎ、俺の隣の席に放った。
「注文したら作れるのか?」
「いや、無理ですね」
カラカラと、村上は喉を鳴らして笑う。
そしてシェイカーを取り出し、赤い液体と後から出したグレープフルーツジュースをシェイカーに注ぐ。

「結局オリジナルか」
氷をシェイカーに落とし、上を閉じる。
その流れは、どうも慣れているように見えた。
「勘弁して下さいよ。店長に注文なんか聞いたら、俺の知らない名前のカクテルとか言い出すでしょう?」
シェイカーを両手で持ち、左胸の前に持って来る。
「よくわかったな」
俺が笑えば、村上は苦笑いでシェイカーを振り始めた。

氷と液体が、綺麗に一定の音を響かせる。
この音は嫌いじゃない。
真剣にシェイカーを振る村上の姿も、俺は嫌いじゃないと、そう思った。
「様になってるじゃないか」
首元のタイも、良い雰囲気を出している。
「そうですかね」
シェイカーを下ろし、グラスに混ざった液体を注ぐ。
そこに、シェイカーの中の氷を落とした。

「シャンパン、開けても大丈夫ですかね?」
ロゼ・シャンパンの瓶を手に、村上が言う。
まぁ、ちょっと飲む程度だと考えると、シャンパンはまだ高いからな。
こんな店のじゃ尚更。
「この後、特に用が無いならいいんじゃないか?お前の奢りだろ?」
分かって言ってやれば、村上はゆっくりと瓶をカウンターに置いた。
「違うのにしますか……」
全く分かりやすい!

「馬鹿。冗談だ。俺が出すから開けろ」
一通り笑って、村上に言う。
別に、俺だってポンポン買える訳じゃないが、水を差すような事はしたくない。
「すいません」
村上は小さくそう呟き、ロゼ・シャンパンのコルクを抜いた。
そして、バースプーンに沿わせてロゼ・シャンパンをグラスに注いだ。

「意外と綺麗なカクテルを作るじゃないか」
差し出されたグラスに入ったカクテルは、先に入れた液体の深い赤と、ロゼ・シャンパンの淡いピンクで美しいグラデーションを作っている。
ベリーの飾り付けも、良いアクセントだ。
「正直言うと、作り方はかなり適当ですけどね。分かるのは、シェイカーの持ち方くらいです」
照れ笑いを浮かべる村上は、自分のグラスにはただロゼ・シャンパンを注ぐ。
「お前は飲まないのか。カクテル」
そうなると、少々味が心配だ。

「店長の為に作ったカクテルですから」
ニコニコと笑って、村上はグラスを浮かせる。
乾杯しようって事か。
「女が相手なら、口説き落とせたかもな。ソレ」
自分もグラスを浮かせ、村上のグラスに軽く当てた。

「トコロで、最初の赤い液体って何なんだ?」
見た感じ、濃度の高いシロップのようだったが。
「あぁ。それならザクロのリキュールですよ」
ザクロの赤か。珍しいな。
一口飲んでみる。
少し濃い気もするが、まぁ美味しい。
でも商品にはならないな。

「店長、結構美容に気を使ってるでしょう?だから使ってみました。ザクロは美容に良いんですってね」
してやったりと言った顔で、村上が言った。
本当に俺の為に作ったカクテルなんだな。
しかも、どうやら今考えた訳じゃ無さそうだ。
「だから、男の俺より女に使えって!その手は!」
俺だって、ちょっとクラッと来たんだ。
女なら落ちるに決まってる。

村上はロゼ・シャンパンを飲み、喉を鳴らして笑った。
「今は、女じゃ相手が居ませんよ。俺が落としたいのは店長ですから」
よくもまぁ、いけしゃあしゃあと言えるもんだ。
「止めろよ。本気にするぞ?」
悪い冗談だ。気色悪い。

「良いですよ。本気にしても」
いきなり落ちた声のトーンに、俺は村上を見上げる。
笑みを浮かべる村上は、冗談のようでいて目は挑戦的だった。
「馬鹿か……」
そんな顔されたら、本気になるしか無いじゃんか。
返答はどうあろうと。

「店長!そんな真面目な顔しないで下さいよ。冗談です」
一瞬引き締まった空気を壊すように、上擦ったテンションで村上は言う。

馬鹿だ。此奴は。
いつからの付き合いだと思ってるんだ。
お前のクセも、最後の最後で押しの弱いトコロも、全部分かってる。
本気で言ったクセに、お前は怖くなって逃げたんだ。

ヘラヘラとした笑顔を浮かべる村上から目を反らし、カクテルを口に流し込む。
やはり濃い。
せっかくのロゼ・シャンパンなのにな。
「村上。そっち寄越せ」
村上のグラスを取り、純粋なロゼ・シャンパンを飲む。
やはり旨いな。

「……カクテル、美味しくなかったですか?」
心配そうに、村上が言う。
不味いんじゃない。
「濃いんだよ。ザクロの味が」
それがまたお前らしくて。
「でも、好きだよ」
お前の……。

「店長…」
「何真面目な顔してんだ?カクテルの話だよ。カクテルの」
戸惑いと期待の混ざった表情の村上に、俺もふざけ返してやった。

村上だって馬鹿じゃない。
俺の考えも見抜いているだろう。
だが、お前なら分かっていても、分からないフリをしてくれるだろ?

「口に合ったなら、良かったですよ」
柔らかく、村上が微笑む。
「さっ!シャンパン開けちまったし、今日は飲むぞ!」
いつも通りに笑って、村上のグラスにロゼ・シャンパンを注いだ。

これで良い。
想いを確かめ合ってしまえば、きっと俺達は今のままではいられないから。

「村上」
俺が名前を呼べば、村上はグラスをカウンターに置く。
「このカクテル。俺の為に作ったなら、俺以外には作るなよ」
カクテルの入った自分のグラスを指で弾けば、高く綺麗な音がした。
村上は小さく笑い、隣の席に置いてあった上着に手を伸ばす。

「作りませんよ。貴方以外には」
耳元で、囁くように村上は言った。
まるで、上着を取るついでと言ったように。

「やっぱり旨いですね。ロゼ・シャンパン」
正面に戻り、ニコニコと笑う村上はいつも通りだ。
グラスに残ったカクテルを飲み干し、自分のグラスにもロゼ・シャンパンを注ぐ。

この後は、いつも通りに下らない話でもして。
これまで通り、気付かないフリをし続けるんだ。
そうでもしなきゃ、もう一緒には居られないから。
きっと、俺達は臆病なんだ。
変わってしまう事に対して。

「店長」
呼ばれて顔を上げれば、村上が俺の唇に指を添えた。
「俺、店長の事好きですからね」
心臓が、大きく跳ねる。
何言ってんだ此奴は。

「バ〜カ」
村上の手を押し退け、俺は笑う。
「俺も好きだよ。村上の事」
決して、本心は出さぬように。
表情は乱さぬように。

一瞬、哀しそうな顔をした村上は、ゆっくりと手を戻した。
「まぁ、飲みますか」
グラスの中で、ロゼ・シャンパンの泡が弾ける音がする。
互いに敬遠し合う俺達は、きっと人から見れば酷く滑稽なのだろうな。

二人きりの時間は、安心するようで、一定の緊張がある。
この均衡こそが、もしかしたら一番好ましいのかもしれない。

「村上」
呼べば俺を見てくれる、そんなお前を離したくない。
そう思う俺は、我が侭なんだろうか。







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