管理人の腐った頭にご注意下さい。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 三時間クオリティ!\(^o^)/ 月にあわせようとしたらこの体たらくだよ! 一応、黒一と開店だよ! 読み返してないから、誤字脱字は勘弁な! 一 その日の仕事が終わり、ビルから出て最初に見たのは、地上を明るく照らす満月だった。 ハッキリと地面に影が出来ていて、その月の明るさが良く分かる。 ただ、銀色に揶揄される事の多い月の光は、確かに周りの色を鮮やかに見せる事はしていない。 白い光を照らして、地上に白と黒のコントラストを作り出していた。 まぁ、それも表の繁華街に出てしまえば掻き消されるモノだが。 「………」 酒が飲みたい。安物でもいいから。 近くの自販機を覗くと、取り敢えずアルコールが取れるニセモノの酒が並んでいた。 小銭を取り出し、どうしたものかと自販機を眺める。 すると、隣に誰かが立った。 「安酒か」 その声に、背中がゾクリとした。 何故、あのお方がこんなトコロに? 横に目をやれば、お付きの者も着けずに立つ、黒崎様の姿があった。 「この後は時間があるのかね?」 こんな月の夜に、貴方と会うなんて。 「ハイ。もう、この後は……」 「それは良い」 俺の言葉を聞いた黒崎様は柔らかく笑い、俺の肩に手を置いた。 その手だけで、俺はつい身体を固くしてしまう。 「なら、私と一緒に飲まないか。勿論、このままここの酒を買って帰ろうと、君の勝手だがね」 貴方の誘いを、どうして断れるでしょうか。 「何処に、連れて行ってもらえますか?」 俺がそう答えれば、黒崎様は満足そうに頷き、そっと手を下ろした。 それが、俺には寂しく思えた。 「付いて来なさい」 その声はまるで、悪魔からの誘いのように、俺の身体を縛り付ける。 恐怖からだとか、上司だからだとか、言い訳しようと思えば出来るかもしれない。 けれど、この感情はきっと……。 不毛な感情に、俺は首を振った。 二 何処か店に連れて行かれると思っていたが、実際に連れて行かれたのは黒崎様の屋敷だった。 通された部屋は、正面に大きな窓のある部屋。 この広い屋敷の客間というには少しシンプル過ぎる内装で、どちらかと言うとプライベートな部屋の様に思える。 そのせいか、少し自分の身体が緊張で震えている事に気付いた。 それにしても、何故この方はお付きも着けずに俺の元に来たのだろう。 使いでも出して下されば。 いつもの黒服を着けて、カジノに来て下されば。 俺は変に勘違いをする事も無い。 いつもの仕事だと割り切って、こんな緊張をする事も無かったのに。 黒崎様に促され、三人掛けのソファに座る。 だが黒崎様は座らず、先程使用人が用意したワインの入ったグラスを持ち、窓の方に向かう。 そして、不意に黒崎様は部屋の明かりを消した。 ビクリと身体が震え、心臓が煩く跳ねる。 「あの……」 俺が声を出すと同時に、黒崎様はカーテンを開け放った。 白い光が窓から差し込み、部屋に深い陰影を付ける。 そのモノクロの世界で、黒崎様の持ったワインだけが、美しい紅色を放っていた。 「黒崎…様……」 美しいと、素直に俺は思った。 誰かに理解して欲しいとは思わないし、思えない。 ただ、俺はこの男が、美しいと思ってしまった。 あまつさえ、この男を欲しいとまで。 太陽を手に入れようとして翼をもがれた神話はあるが、月を手に入れたいと思ってしまった場合、どうなるのだろうか。 俺がただ、動く事も出来ずに黒崎様を眺めていると、黒崎様はゆっくりと俺の前まで来た。 そして手を伸ばし、優しく俺の髪を撫でる。 その指先だけで、蕩けそうになる心が嫌だった。 「君にはワインが良く似合う」 黒崎様はそう言って、俺にワインを差し出す。 その時口に含んだワインは、今まで飲んだどのワインよりも美味しく思えた。 三 錆びた窓枠から空を見上げれば、空全体に雲が広がっているのが確認出来た。 迫っているとか言う台風のせいだろう。 折角、今日は一年で一番月が美しい夜だと言うのに、これでは意味が無い。 窓から顔を引っ込め、振り返って見えるのも、俺の持ってきたワインをコップに注ごうとしている馬鹿だけだ。 「一条ってワイン好きだよなー」 気の抜けた声でカイジが言う。 「高いのによく買うよな」 カイジは、コップに注いだワインに口を付ける。 高い安いの問題じゃないだろう。 大体、そこらのスーパーなら安いワインだって売っているし。 俺がいつでも馬鹿高いワインを買ってるとでも思っているのか? まぁ、今日は少し高めだが。 「カイジくん。知ってるか?葡萄酒ってのは、世界最古の酒って言われていてな、神話や聖書にも登場するんだ」 いきなりそんな話を始めたせいか、カイジは不思議せうな顔をする。 「へぇ?何?梅酒のブドウ版みたいなの?」 「馬鹿!ワインの事だ」 コイツ、違う酒の話だと思ってやがったのか。 カイジは腑抜けた顔で、ふ〜んとだけ呟く。 「ちなみに、ブドウの花言葉は……」 『酔いと狂気』 いや、これは言わなくても良いか。 「それなら俺知ってるぜ!」 意外なカイジの言葉に、顔を上げる。 「ほほぅ。ガサツなカイジくんにそんな知識があるとは思わなかったな」 俺の言い様にいつもなら怒っているトコロだが、珍しく話せる事が見つかったせいか、嬉しそうな顔をしていた。 「どっかで最近見たんだよ。アレだろアレ」 カイジはピンと人差し指を立てる。 「『慈愛』」 俺の嫌いな言葉だ。 それにしても、カイジくんが自信満々な表情で『慈愛』! その不意打ちに、思わず笑ってしまった。 「ところがどっこい、それは野ブドウの花言葉です!」 俺が笑った事と、ちょっとした勘違いを自信満々に言ってしまった事で、カイジは顔を赤く染めていく。 「に…似たようなもんだろ」 ゴニョゴニョとカイジは呟いて、ワインを口に運ぶ。 そんなカイジを眺めて、俺はまた笑った。 「今日は間違えてばかりだな」 俺がそう言うと、カイジは「うるさい」と言って、そっぽを向いてしまった。 そんな事もお構い無しに一通り笑うと、俺もワインの入ったグラスを手に取った。 意味があったハズのワインに、一年焦がれ続けたハズの満月。 それはこんなに呆気なく忘れるモノだっただろうか。 いいや、去年までは違った。明らかに。 一人でワインを飲み、月に焦がれた。 また、あんな日が来てくれないかと。 コイツに出会ったせいだ。 バツが悪そうに、今目の前でワインを飲んでいるこの男の。 小さく、ため息を吐いた。 何故よりによって、この男なんだろうかと。 ただ、来年からはきっと、満月を焦がれる事は無いのだと、酔い始めた頭でそう思った。 PR |
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