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黒一+開店です。
小説がちょっとありきたり感出て来たので、そろそろどうにかしたい。


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「綺麗だよ。一条。」
男の手が、肩を撫でた。
「君は何より美しい」
在り来たりな言葉ばかり並べて、その瞳の奥は下衆な欲望で満たされている。
どうせ、そんなモノなのだ。

誰も俺の事を本気で愛してなどいない。
今この身体に触れている男でさえ、俺の事を見ていない。
それはそうだろう。
俺は、ただの道具に過ぎないんだから。

男はまるで玩具でも愛でるかの様に、俺の身体を撫でまわす。
頬に触れた左手に擦りよって見せれば、男は満足げな表情を見せた。

この行為は手段であって目的じゃない。
俺は自分を買ってくれる男がいれば誰でも良かった。
ゴミ箱に捨てられ、惨めな思いでその底を這いずり回るよりかは、どんな使われ方であろうが幾らかマシだ。

だからと言って、そこで満足するほど素直には生まれていない。
自分を買った男をも越えて、いつかは誰よりも高みに。
そう思っていたハズなのに。

「何が欲しい?その口で言ってみなさい」
男の指先が唇に添えられる。
「私は……」
シーツを握り締め、回らない頭で考えてみる。
俺が欲しいのは?
地位?名誉?金?全てを思うままに動かせる権力?
それとも……?

悪魔の囁きを繰り返す、男の顔を見上げた。
貴方が欲しいと言えたなら、どんなに楽だろうか。

「沼を…カジノにある、沼を下さい」
俺の働いているカジノの花形、1000倍台。沼。
アレはまだ、羽化していない。
「沼を手に入れてどうする?」
男は、俺の言葉に面白そうに笑う。
「アレはまだ良くなります。やらせて下さい。私に」
そう、貴方は私がそう言う方が嬉しいのだ。
野心家で、ギラギラした私だからこそ、見ていてくれるのだ。

「そうか。ならやってみなさい」
男は笑みを浮かべ、無駄の無い動きで俺をベッドへ押し倒す。
貴方は、俺の事など見ていない。
口に出す言葉も、在り来たりの言葉だけ。
花に水をやるように、犬に餌をやるように。
それでも俺は、貴方が欲しい。

「黒崎様っ…!」


それから暫くして、俺はカジノの店長に抜擢された。









金属同士がぶつかり合う、高い音が響く。
けたたましい音楽の波の中、溶けていく一万円分の玉を恨めしげに眺めていた。
「クソッ!」
舌打ちをして、台を叩く。
財布を覗いてみるが、残りの千円には手を出せない。

「やぁカイジくん。今日は調子が悪いようですね」
「あぁ?」
隣から聞こえた茶化すような声に、苛ついた声のまま振り返る。
その隣の台に座っていた男を見た瞬間、思考が停止した。

黒く長い髪、体のラインにそったスーツ。
煙臭いパチンコ屋に似合わないその風貌。
「一条……」
俺が名前を呼べば、一条はニコリと笑う。
裏カジノで出会った時と同じ笑顔だ。
「何処か別の場所で話しませんか?」



客の少ないファミレス。
目の前では、地下に落ちたハズの一条が座っている。
コーヒーを一口啜ると、一条は俺を見た。
「その…早かったよな…出るの…」
その場の空気に耐えきれず俺が言うと、一条は小さく「あぁ」と呟く。

一条は一体、何の為に俺に会いに来たんだろう。
報復する為?
だとしたって、この一条の態度はオカシイ。
どう見ても、一条はソファでくつろいでいる。

「なぁ、カイジくん」
不意に一条が俺の名前を呼び、そっと手を握った。
「お前は俺が好きだろう?」
一条の言った言葉の意味が分からず、再び思考が停止する。
そして、その言葉の意味を理解した瞬間、顔の温度が上がるのを感じた。

「なっ…!何で俺がお前なんか!」
言葉に詰まりながら俺が言う。
すると一条は、携帯を取り出した。
「そうか。カイジくんは俺が嫌いか。それならそれで良い」
俺の手を握った手を離し、一条は携帯の番号を押していく。
耳に携帯をあて、一条は俺を一瞥する。

「あ。村上か?久しぶりだな。俺だ」
村上。
確か、カジノで一条と一緒に居た男。
「あぁ。出てきた。じゃなきゃ話せる訳ないだろ?」
向こうの対応に一条はクスクスと笑う。
「なぁ村上。何処かで会えないか?」
その一条の言葉で、俺は携帯で話し始めた理由を知った。

此奴、あの村上って男にも、同じ質問を投げ掛ける気だ。
そう思った時、俺は無意識に一条の携帯を奪い取っていた。
携帯からは、村上が必死に手帳を探している音が聞こえている。
その俺の行動に、一条は狼狽える事も無く黙って俺を見た。

「どうしたんだい?カイジくん」
一条は分かってやっている。
「何がしたいんだよ。お前」
俺が言えば、一条はまた笑みを浮かべた。
「抱いて欲しいんだよ。この身体を」
携帯を持った俺の手に指を絡ませ、ゆっくりと電話を切る。

「カイジくんに出来るかい?」
薄く開かれた瞳で、一条は俺を見詰める。
「俺は……」
そのまま言葉に詰まっていると、携帯が鳴り出した。

「残念。時間切れだ」
携帯を取ろうとする一条の手を咄嗟に避け、俺は携帯を切った。









汚いアパートの一室。
湿っぽくぺしゃんこな煎餅布団の上に、一条は膝を曲げて座った。
異様だ。
こんな部屋に、一条みたいな人間が居る事に違和感を覚える。

「なんか飲む?」
苦し紛れに提案してみるも、一条はふるふると顔を横に振った。
そして自分の手で、ネクタイを解いて見せる。
その手つきや動きからは、洗練された色気を感じた。

「来いよ。カイジくん」
俺の左手の薬指と小指を握り、一条は誘いの声を出す。
一条の隣に座り、言われるがままジャケットに手を掛けた。
脱がせたジャケットを布団の傍らに置き、Yシャツのボタンを外そうとした時、一条の唇に目が行く。
そのまま一条の顔に目をやれば、一条は真っ直ぐと俺を見ていた。

「キス、したいのか?」
意地の悪い笑みを浮かべ、一条は言う。
言葉を返す代わりに軽くキスをしてやると、一条は俺の首の後ろに腕を回した。
「もっと」
一条がそう言って目を瞑る。
唇を重ね、薄く開いたトコロに舌を捩じ込めば、一条は自ら舌を絡ませてきた。

湿った音が部屋に響いていく。
一条の背中と頭を抱き、逃げられない様に拘束して、一条の口に自らの唾液を送り込んだ。
一条の喉がゴクリと鳴り、ようやく口を離した。

酸欠で息を乱したまま、一条は腕を解く。
服を脱がせろと言う事だろう。
再びYシャツのボタンに手を伸ばし、一つ一つ外していく。
露になっていく一条の身体は、地下に居たせいか白く感じる。
その中で、小さな二つの膨らみが主張していて、俺はそれに指で触れてみた。
「んっ…」
一条の身体がビクリと震える。
どうやらここは弱い様だ。

「一条…かわいい…」
身体を震わせ、眉を寄せる一条の姿に、つい口に出た。
その瞬間、一条は顔を歪める。
「言葉はいらない。どんな綺麗な台詞を並べたって、結局ヤってる事は一緒だろ」
一条はそう呟き、俺の手を急かした。

一条が何を考えているのか。
それは分からない。
ただ、一条はひたすら身体を求められたいようだった。

全てのボタンを外し終え、Yシャツを脱がそうと握った時、一つ思い付いた。
握ったYシャツごと一条を引き寄せ、胸の膨らみに唇を付ける。
そのまま吸ってみると、一条は艶のある息を吐いた。
俺のする事全てに、余裕を持って対応している一条。
このまま一条の弱いトコロを弄っていけば、あの時みたく必死な一条が見れるんだろうか。

舌でその膨らみを転がすように舐め、一条の背中をなぞる。
甘い声が聞こえて来たら、そろそろ反応しているであろう下に手を伸ばす。
だが、その手は一条に止められた。

「そこ触りたかったら、お前も脱げよ」
そう言った一条は、挑戦的な目で俺を見ていた。









「早かったな。一条」
机で書類を弄りながら、男が柔らかく笑う。
「確かに出来る子だとは思っていたが、ここまでとはな」
本当に意外だったのだろう。
もう、俺は地下から出てこないと思っていたハズだ。

そして、地下に落ちた俺の事など、一度も思い出したりしなかった。
貴方にとって、俺はいらないモノになってしまったから。
それでも、這い上がって来た俺に会ったのは、珍しさからか。
それとも、まだ俺に利用価値があるからか。
また、俺の心を囲い込もうとしている。

男は不意に立ち上がり、俺の前に立った。
「生還した祝いをやらなければね」
男の手が頬を撫で、懐かしい温もりが触れる。
「何が欲しい?言ってみなさい」
昔言われたモノと、同じ言葉。

私が貴方にあれだけ尽くしても、近付いてすらいなかった。
昔と同じ立ち位置。
捨てられもしなければ、愛されもしないただの玩具。
自分の愚かさに笑えてくる。

頬に置かれた男の手を取り、指を絡めた。
「貴方が欲しいです。黒崎様」
ずっと想いながら、ずっと言えなかった言葉。
それを吐き捨てれば、男は眉を寄せた。
「それを口にする程、君は愚かでは無いと思っていたがね。地下で毒されたか?」
男は手を解き、つまらなそうに俺を見る。

「私が与えると思うか」
「いいえ」
貴方は俺の事など見ていない。
昔も今も。
だからこそ、言っておかねばならなかった。
「愚かだとは分かっています」
これは一つの決別だから。

俺の様子からその意思を感じたのか、男は不敵な笑みを浮かべた。





目を覚まして見れば、もう窓の外は明るくなっていた。
抱くように握り締めていたカイジの服を放り投げると、台所に居たカイジが振り向いた。
「一条。起きたの?」
水を持って、カイジがこちらに来る。
それを受け取ろうと起き上がると、カイジは顔を反らした。
「何してんだよ」
目を瞑ったまま水を受け渡そうとするカイジに聞く。
「ふ…服着るとか、布団で隠すとかしろよ…!」
照れてんのかよ。

「昨日、散々色んな事したクセに、何言ってんだ」
水を飲みながら、一応前だけ隠してやる。
すると、カイジも恐る恐る目を開けた。

「……あのさ」
まだ俺の身体についた情事の跡が気になるのか、目を泳がせながらカイジが呟く。
「何で、俺のトコロに来たの?」
ヤってから言うのか。それを。
「だって、やっぱりあの村上って男の方が付き合い長いだろうし…。俺…お前に恨まれる事はあっても好かれる事は…」
ウジウジと、指を弄りながら言葉を綴る。
あの時のカイジとは大違いだ。
小さくため息を吐くと、カイジはビクリと身体を震わせた。

「お前ならさ、理性もモラルも脱ぎ捨てて、ただ抱いて貰えると思ったんだよ」
愛されなくても良い。
ただ、飾りも理性も全て無くして、触れてみたかった。

「ふぅん?」
納得のいっていない顔でカイジは布団を見る。
そして、俺の服を拾い集めた。
「良く分かんないけど、俺は一条が好きだから抱いたんだからな」
スーツとシャツを、カイジは俺に差し出す。
「ならお前は、俺をずっと見ていてくれるのか?」
渇いた声で俺が言えば、カイジは俺の手を握った。
「一条が望むなら、俺が見ていてやるよ」

どうして、この男はこんなにも甘いのだろう。
堕落するのは見えている。
あの方と比べてしまえば、この男なんて其処らの野良犬と一緒なのだ。
それなのに。

俺は何故、この男に会いに来たんだろう。







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