管理人の腐った頭にご注意下さい。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 開店で小話です。 一条の休日に、カイジが乗り来んできた話。 カーテン越しに入ってくる昼間の柔らかな光と、部屋に広がるコーヒーの香ばしい香り。 後は好きな曲を流し、小説でも読み始めれば、充実した休日を送れる事だろう。 だが、今日はそうもいかなそうだ。 淹れたてのコーヒーを口に含み、テーブルの向かいに座っている男を見た。 その男は、先程俺が作ったハムエッグサンドを頬張っている最中だ。 バリバリと小気味の良い音を立てて、男はハムエッグサンドを噛み締めた。 「一条って、飯作んのも上手いんだな」 上手くも無いお世辞は良いから、さっさと消えろ。 いきなり電話してきて、俺が休みだと聞けば押し掛けやがって。 「うわ。コーヒーも美味い!やっぱインスタントとは違うな」 それくらいの違いは誰でも分かる。 豆の違いも分からねぇクセに。 「で、何の用なんだい?カイジくん」 一呼吸置いて聞いてやれば、カイジは小さく唸る。 「ちょっと恥ずかしいんだけどさ」 図々しく人の家で飯をたかるお前から、恥ずかしいなんて言葉が出てくるとはな。 「一条の、声が聞きたくなって…」 俯いて、指先でカップを弄りながら言うカイジは、顔を少し赤らめた。 本当に、予想の付かない男だ。 そんなトコロが俺は嫌い。 「なら良かったな。目的は達した。帰れ」 テーブルの下からカイジの足に軽く蹴りを入れれば、カイジはため息を吐いた。 「いやそうじゃなくてさ…」 まるで俺が何も分かっていないような口振りで。 「何だよ。ほら、声は聞いただろ?帰れ」 何故、折角の休みをこんな訳の分からない男に潰されなきゃいけない。 本当は、今頃買い物に出掛けて、贔屓にしているカフェにでも行こうと思っていたんだ。 それがこの男のせいで…。 俺が睨むと、カイジは呆れた顔でハムエッグサンドを口に運んだ。 「一条ってさ、俺の事なんだと思ってんの?」 「クズ」 間髪入れずに答えてやれば、カイジは顔を歪めた。 「そういう意味じゃなくて」 別に、カイジが言わんとしている事くらい分かっている。 だが、それを素直に口に出すのは、どうも癪に触る。 「ま、体の相性は良いとは思ってるよ。カイジくん」 コーヒーを飲み、カイジに言ってやる。 すると、カイジはムッとした顔をしながら、少し赤くなった。 耐性の無い奴だ。 「それだけで、俺と一緒に居るのか?」 カイジは手を握り締め、俺を見た。 その表情に、今度は俺がため息を吐いた。 「ハイハイ。愛してるよカイジくん。大好きだ」 軽く声に出してやり、空になったカップを持ってキッチンに向かう。 カップを水に付け、テーブルに戻ると、カイジは険しい顔でハムエッグサンドを咀嚼していた。 その口元に付いた玉子を、椅子に座りがてら指で掬って食べる。 すると、カイジはポカンと口を開けた。 「何だよ」 意外な反応に戸惑ってそう聞くと、カイジは照れながら指をモジモジと動かす。 「いや、その…」 本気で照れやがって。 全く、扱いづらい。 いや逆か。簡単過ぎるのか。 免疫が無いんだ。こういう事に。 「カイジくん」 声を掛ければ、カイジは期待を込めた顔で此方を見た。 成る程、此奴がすぐ人に騙される理由が良く分かる。 「やっぱりクズって顔してるな」 俺が言えば、カイジはまたムッとして、空になった皿とカップを持ってキッチンへ消えた。 どうやったら、あんな馬鹿が育成されるのか。 そんな事を思いながら、目を瞑って椅子の背もたれに寄りかかった。 外から車の走っていく音や、鳩の鳴く声が聞こえる。 目を瞑った事で、やっと聞こえるような小さな音だ。 流しを流れていく水の音が途切れ、カイジの気の抜けた足音がする。 不意に、唇に柔らかい何かが触れた。 それは軽く震えていて、不器用に重ねられている。 精一杯の勇気を出して起こした行動なのだろうと、直ぐに分かる。 慣れていない、まるで中学生が初めてするような、そんな雰囲気だ。 その柔らかい何かが離れると、吐き出された息が顔にかかる。 馬鹿だなぁ。 目を瞑ったまま、前にいるであろう彼の頭を引き寄せ、此方から深く唇を重ねてやった。 「……ん…」 彼の声が短く漏れる。 頭の中パニックだろうなぁ。 腕を解き、解放すると共に目を開ければ、情けない顔をしたカイジの姿が見えた。 あぁ。 この顔は嫌いじゃない。 性格が悪いって? 今に始まった事じゃない。 俺は、この惚けたような、カイジの情けないお顔が大好きだ。 だって、こんな顔を見ていると、カイジはもう俺のモノだって分かるから。 自然と口角が上がっていたのか、カイジは少し嬉しそうな顔をする。 勘違いもいいとこだ。 「好きだよ。一条」 照れながら、カイジが言う。 当たり前だろ。そんな事。 今更嫌いだなんて言ったら、俺はお前を許さない。 「一条っていつも忙しくて会えないから、会って触れたかった」 カイジの手が、俺の頬に触れる。 その手は汗でじっとり濡れていて、緊張しているのが分かった。 「それに…」 その言葉から、カイジは口を尖らせる。 恥ずかしい時にする口だ。 「一条が俺の事忘れてそうで…心配だったから……」 小さい声で呟かれた言葉に、思わず目を見開いた。 分かっていたが、やはり馬鹿だ。此奴は。 普通言うか?その相手に。聞かれてもいないのに。 両手でカイジの頬を勢いよく挟む。 同時に、パンッと高い大きな音が響いた。 「お前なんか嫌いだ!嫌い!」 椅子から立ち上がり、別の部屋に向かう。 後ろからカイジの情けない声が聞こえるが、構わず寝室に入った。 ドアを閉め、ベッドに倒れ込む。 「一条ぉ。何で怒ってんだよ…」 ドアの向こうから、カイジの声がする。 バカ。バカ。バカ!何で分からない! 枕を引き寄せ、顔を埋めた。 「何か言っちまったなら謝るからさ…」 謝るのは良いからもう帰れ。 「……俺の気も知らないで…」 声に出てしまったその言葉に、情けなくてシーツを握り締めた。 そりゃ、カイジの事なんて仕事中は忙しくて忘れてたさ。 けど、そんなのお互いそうじゃないか。 自分の会いたい時は来るクセに、俺が会いたい時は全く連絡を寄越さない。 我が侭なのは分かってる。 けど、「会いたい」だなんて、そんな事。 口が裂けても言いたくなかった。 言えなかった。 堪らなくなって、枕をドアに投げ付ける。 その音で諦めたのか、カイジは一度ドアをノックした。 「ごめんな。今日はもう帰るからさ」 悄気た声でカイジは言って、その足音が玄関へ向かう。 急いで起き上がり、音を立てないように寝室のドアを少し開けて玄関を見た。 その時にはもう、カイジは靴を履いている最中で。 こんな女々しい自分は嫌いなのに。 カイジが、玄関のドアに手を掛ける。 引き留める? 出来る訳が無い。そんな事。 カイジみたいに、素直になれたらどんなに楽か。 でも、本当にそう成りたいとは思えない。 未練がましくカイジを眺めていると、カイジが不意に振り返った。 その瞬間、バッチリ俺と目が合う。 「一条…」 ニヤリと笑うカイジに、思わずドアを閉めた。 ドスドスと部屋に上がる足音と、嬉しそうな声を上げるカイジに、恥ずかしさで顔が熱くなる。 「やっぱりもうちょっと居るから、出たくなったら出てこいよ!」 楽しそうに言って、リビングの方へ歩いていく。 「うるさい!帰れクズ!バカ!死ね!」 寝室のドアを蹴り上げて叫ぶも、最早それは何の説得力も無い。 また弱味を見せてしまった屈辱に、俺は泣き出しそうになる。 どれもこれも、全部アイツが悪い。 ベッドに飛び込み、掛け布団を被る。 何であんなクズに俺は……! そうして、俺の貴重な休日は浪費されて行った。 PR |
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