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こんばんは。
クリスマスイブですね。
実感がまるでありません。
関係が無くなりつつあるからですね。HAHAHA

今回は、クリスマスの黒一です。
ウチの一条は、相変わらず黒崎が大好きなようです。

Rについては、寸止めしたから付かないはずだ。



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聖なる夜に








世の中はクリスマス一色のこの日。
一応クリスマスらしい装飾はしてあるものの、こんな裏カジノにクリスマスらしさを求めている奴らも居ないだろう。
大体、非人道もいいところの帝愛に、クリスマスも何もあったモノでは無い。

従業員達も、いつの間にか『彼女居ない組』なんて徒党を組んでいて、今夜の夜勤は彼等なのだそうだ。
従業員室に行けば、僻みにも似た悪口が飛び交っている。

「店長は彼女との約束無いんですか?」
なんて聞かれたモンだから、
「面倒だから、今は彼女は作ってない」
と素直に答えれば、何とも形容し難い表情を浮かべられた。
どうやら彼女が居ないだけでは、彼等の仲間では無いようだ。
だが、無条件で彼等に仲間と認識されていた村上は、少し哀れに思える。

そんな事もありつつ、自分の就労時間が終わりに近付いた頃、村上が話しかけてきた。
「どうです?仕事が終わった後に一杯」
愚痴でも聞いてやりたい気もするが、今日はいけない。
「すまないな。先客がいるんだ」
そう答えれば、聞き耳を立てていた部下が
「やっぱり彼女だ!」
なんて騒いでいたが、その口も数分後には閉じられた。

その理由は、数人の黒服を従えて、我等の上司である黒崎が来たからだった。

突然の訪問に驚いていると、黒崎は俺に向かって囁く。
「今日これから、空いているかね?」
コレに、拒否の言葉を紡ぐのは、俺には不可能な事だった。








黒崎に連れられ、高級ホテルの一室に入る。
黒服達は部屋の前で立ち退いた為、部屋の中には自分と黒崎の二人きり。
誘導されて座ったソファは、ゆったりとしていて柔らかく、カジノのソファとは比べ物にならなかった。

「今日は、どうなされたのですか?」
黒崎はクリスマスイブの日、いつもなら帝愛主催の悪趣味なパーティーに参加している。
基本、あの老害としか言い様の無い会長を楽しませるだけのパーティーだ。
俺もカジノの店長になった年に、顔見せの為に連れて行かされた。
だが、元々会長に嫌われている俺は、ひたすら会長に公開私刑をされたようなモノだった。
次の年からは呼ばれなくなったが、それはきっと黒崎が庇って下さっているからだろう。

「君に会いに来た。それでは駄目かね?」
不敵な笑みを浮かべ、黒崎は言う。
ソファが軽い音を立て、正面に座っていた黒崎が俺の隣に座る。
「折角のクリスマスの夜に、美しいモノを見たいと思うのは可笑しな事か?」
黒崎の皺の刻まれた手の平が、そっと俺の頬を撫でた。

「お戯れにならないで下さい。本気にしてしまいます」
早く打つ鼓動を抑え、出来るだけ普段通りの声を出す。
彼が俺に対して、これほど素直に優しくしてくれる事などあり得ない。
彼にその気があったなら、きっと俺は今だって。
「そう警戒するな」
楽しそうに黒崎は笑い、俺の髪を撫でる。

「パーティーには顔を出して来たが、会長の気分が乗らなかったようで、早々とお開きになったのだよ」
俺の髪を撫でながら、黒崎は説明する。
ほら見たことか。
やはり、自分に会いたくなったというのは嘘だ。
余った時間潰しに、近場に居た俺で遊んでいるだけではないか。

「そう拗ねるな」
俺の思考を覗いたかの様に、黒崎は俺の腰を抱き寄せる。
「最初に思い浮かべたのは君なんだよ。一条」
甘ったるい息が、俺の耳を掠める。
それだけで蕩けそうになる自分が嫌だった。
「ありがとう…ございます…」
何とか口に出すと、黒崎は軽く笑う。
「今夜は、他に予定は無いだろうね」
その、確認する言葉で思い出す。
俺が今日、本来約束していた相手の事を。

仕事が終わったら彼の家に行って、俺の取って置きのワインを飲ませてやろうって…。
今頃、彼奴は俺の事を待っているだろうか。
あの寒い部屋で、一人寂しく。
野良犬みたいな彼奴は、俺の帰りを待ってくれているだろうか。

固まった俺を見て、黒崎はまた笑う。
「先客があるのか。それはいかんな」
黒崎の手が、俺の髪から離れる。
それが、俺には酷く恐ろしかった。
「いえ!私は……っ」
咄嗟に手を握ると、黒崎は少し驚いた顔をする。
それに気付き、ゆっくりとその手を離す。
「申し訳ありません…。ですが、その…ここに、居させて下さい」
貴方の事を、ずっと望んでいたのだ。
彼奴に会う何年も前から。

「今日は帰してやれんが、相手はそれで良いのか?」
黒崎が聞く。
それは甘い誘惑のようでいて、実のトコロは仄暗い確認でもあるのだ。
俺が今でも、黒崎を優先するかどうか。
俺が今でも、黒崎の支配下にあるかどうか。
分かっていても、答えは一つであった。

「分かって頂けると思います。側に居させて下さい。黒崎様」








トクトクと水音を立てて、目の前のグラスにシャンパンが注がれる。
グラスの中を覗いて見れば、シャンパンの中で気泡が踊るように弾けていた。

「飲みなさい」
黒崎に促され、グラスを手に取る。
シャンパンを飲むのは久しぶりだ。
そっと口を付ければ、豊かな香りが広がった。
「美味しいです…でも、何か物足りない気がします」
黒崎の用意したシャンパンだ。
美味しくないハズは無い。
だが、感じた事を素直に言えば、黒崎もグラスを取った。
「やはり、君には飲ませ甲斐があるな」
嬉しそうに言って、黒崎はシャンパンを眺める。

「このシャンパンはハズレでね。風味も味も弱い。だが、正直分かる者は少ない」
優しげに黒崎は笑うと、口を付けずにグラスを置いた。
「一般の味の分からん奴等には、普通に売られている類いのモノだ」
試されたのか。
黒崎の言葉をここまで聞いて、やっと理解する。
「口直しをしようか」
一口も飲まぬままグラスを退けて、黒崎は新しくシャンパンを取り出した。

「怖がらなくとも、コレはきちんとした上物のシャンパンだよ」
暫く黙ってグラスを眺めていた俺に向かって、黒崎が苦笑を浮かべて言う。
口に含めば、確かに先程のシャンパンより格段に美味い。
「気に入ったかね?」
そっと腰を撫でられて、ビクリと体が震える。
「ハイ。とても、美味しいです」
何とか俺が言えば、黒崎は満足そうに頷いた。

チラリと目を向ければ、黒崎がグラスを傾けている様子が見える。
腰に添えられた腕に、触れ合う足。
黒崎の温度を感じる事の出来る距離。
あぁ。今までこれほどまでに、黒崎の近くに寄れた事があっただろうか。
黒崎が、これほどまでに近くに来て頂けた事があっただろうか。

ぼぅと黒崎の横顔に見惚れていると、黒崎はその視線に気付き、静かに微笑んだ。
ただそれだけで高鳴る胸が情けない。
同時に、体の熱が上がるのを感じた。

いけない。
彼の前で、そんな失態は見せられない。
目を伏せ、シャンパンを口に運んだ。
気持ちを落ち着かせる為にした事だったが、ほんのりと体に染み渡ったアルコールが、その熱を許してしまう。

「一条…」
黒崎の指先が、俺の顎を引く。
「熱いか?」
親指が唇をなぞり、もう片方の手が太股を撫でる。
「あ…あの…黒崎様…」
あぁ、ああ!神罰の下る謂れはあれど、祝福を受ける事など何一つ無いのに。
何故こんな夜に貴方は……。

手が震える。
どう足掻いても、貴方に抗えない。
愛しています。黒崎様。誰よりも。
荒くなる息に、黒崎が首筋を撫でた。
「あぅ…」
幸せで泣きそうになる。
そんな気持ちに気付いたのか、黒崎は楽しそうに俺の髪を撫でた。
まるで、自分の玩具を愛でるかのように。
いいや。実際、俺は彼の玩具でしか無いのだ。
自分の思い通りになる人形。

だが、それでも良い。
貴方がこの体に触れてくれるなら。
「君は本当にかわいいな。一条」
ゆっくりと、黒崎の唇が俺の唇に重なる。

かわいい。
そんな事を言われる歳では無いのだが。
でも、どこかで最近聞いた事がある。
言われた事がある。
いつだっただろうか。それは。
誰だっただろうか。それは。

溶ける思考の中、ぼんやりと思い浮かべたのは、俺を待つ野良犬の姿だった。







早朝、奴の汚ならしいアパートに向かう。
鍵が掛かっていると思いきや、ノブを回せばドアが開いてしまった。
まさか起きているのかと、部屋の中に入るが、奴は布団に丸まって寝ていた。

流しに皿を残し、冷蔵庫を覗けば食い残しのケーキと、安っちいチキンがある。
極めつけは、寝ている奴の頭に被ったままのパーティー用の帽子。
父親の帰りを待っていたガキみたいだ。

風呂にも入っていなさそうな、奴の傍らに腰を下ろす。
何で俺は、あの人に会った翌日に、こんな男に会いに来なきゃいけないんだか。
額に貼り付いた奴の髪を弄れば、奴は目を開く。
奴の目はぼんやりと俺を捉え、不意に見開いた。
「一条…!来てたのか!」
勢い良く起き上がると、奴は嬉しそうに笑う。
そのまま伸ばされた手に、つい後ろに退いた。

あの人に愛されたこの体を、今は奴に触って欲しくない。
理由ははっきりしないが、何となく嫌だった。
その俺の反応に、奴は不思議そうに俺を見た。

「一条?」
奴のある意味で純粋な目に晒されるのが嫌で、小さく息を吐く。
「昨日は、帰って来れなくて悪かった。仕事だったんだよ」
上司と一緒だったって事だけ取れば、接待とでも言える。
かなり無理矢理とは思うが。
だが、奴はそのまま信じたようで、
「まぁ、それじゃ仕方ないよな」
なんて言いながら、頭の上の帽子を取った。
「ずっと、待ってたのか?」
俺が聞けば、奴は照れ臭そうに頷く。

その顔に、思わず首に残っているはずの赤い印を指で触る。
此奴は、あの人に比べたら何の価値も無いのに。
あの人に口説かれたら、此奴からの誘いなんて何の意味も持たないのに。
何だろうか。この気持ちは。

「ごめん」
その呟いた言葉に、此奴は少し驚いて、また笑う。
あの人とは違う、純粋な笑顔で。
「何か、サンタからのプレゼントみたいだから、ちょっと嬉しかったし。いいよ」
馬鹿みたいだ。
此奴の言う事はいつも。
だから俺も、
「いい子にしてたら、次はちゃんとパーティーしてやるよ」
なんて、馬鹿みたいな事を言ってしまう。

あぁ、もしかしたら俺は、あの人と此奴のどちらが欠けても駄目なのかもしれない。









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